椅子の人
投稿者:YoyoYoyoY (52)
子供頃、リビングのテレビを囲むようにグレーの応接セットが
配置されていました。
ガラスのテーブルには、季節の果物やお菓子が置かれ
好きなときに食べるのがたまりません。
そして二人掛けの椅子に寝そべって、テレビを見るのが至福のときです。
学校から帰ると晩御飯を作る母の包丁の音を聞きながら、大好きなアニメ番組を
夕食が出来上がるまで見ていたものでした。
応接セットの椅子は5人が座れるようになっています。
そのうち、テレビに一番近いところにあった椅子は誰も座りませんでした。
音量が大きく聞こえすぎることと、テレビ画面が近すぎて目に悪いことなどが
影響したとは思いますが、不思議とテレビが消えているときでも無人でした。
あるときから、その座らない椅子に座る人が出て来ました。
人と言ってもこの世の人ではありません。
何となく年配の男性のような気配です。
特に悪さもしないので、放置していました。
私にはもやもやとした輪郭が見えていましたが、他の家族は見えないようです。
私は勝手に「椅子の人」と呼んでいました。
その日、ドキュメンタリー番組で戦争の映像が映し出され
凄惨な場面が何度か出て来ました。
すると椅子の人が過剰に反応したようで、バチバチピカピカと光り出したのです。
私はビックリしましたが、彼の生前の記憶と何か関係があるのかなと思いました。
数年後、応接セットも役目を果たし、廃棄されることになりました。
椅子の人はあの後どこへ行ったのか、少し気になります。
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