夢の底から
投稿者:四川獅門 (33)
短編
2021/02/27
18:50
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杉田さんは幼少期から年に数回程、知らない男の夢を見続けていた。
その中年の男は濃い顔をしていて、無精髭を生やしている。グレーの作業着を着ていつも夢に現れた。
杉田さんは夢に男が出る度に他愛もない世間話を重ねていった。
全く知らない男だが、何度も夢に見るうちに親戚のおじさんのような安心感を覚えた。
杉田さんが大学生の頃、またあの男の夢を見た。
「あ、おじさん!久しぶり」
「おう、大きくなったな。ちょっと洗面所貸してくれ」
「どうぞ」
男が洗面所で手を洗っている。
そこで夢は途切れた。
杉田さんが目を覚ますと、洗面所の蛇口から勢いよく水が出ていた。
それ以来男の夢は見ていないが、写真を撮ると顔が歪んで写ったり、黒い影が写り込むようになった。
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