やさしいお婆さんの正体
投稿者:一八 (66)
短編
2022/12/30
01:21
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私が30代の頃、転職をして新しい仕事をする事にしました。
ある工場勤務で、隣の市へバイクで40分ほどかけて行きます。
工場近くの道路を走っていると、1人のお婆ちゃんを見かけます。
少し腰の曲がったお婆ちゃんで、やさしそうな高齢者です。
最初は、気にならずバイクで素通りをしていた私でしたが、
そのお婆ちゃんは、道路を通行する車や人に礼をして行きます。
朝にしているようで、軽く会釈をして出勤する人たちを送っている感じです。
私は、その光景を見て微笑ましく思いお婆ちゃんと会う事が楽しみになります。
毎日、道路沿いに立って通行人に頭を下げるお婆ちゃんは、おそらく近所でも評判のいい人と感じたものです。
新しい仕事場に通い出して1か月経った夜、お婆ちゃんがいる場所で1人の男性がいました。
私は、30代ぐらいの知らない男性でしたが、お婆ちゃんの事を聞いてみようと声を掛けます。
「ここに朝いつもいるお婆ちゃん。通行人に礼をしてえらいですね。」
すると、男性は私に言って来ました。
「お婆ちゃん?あの人死んだよ。1か月前に病気で死んだよ。」
私は、「ええっ」と、思いその言葉に驚き信じられませんでした。
毎朝道路沿いに立って礼をしてくれるお婆ちゃんは、幽霊だったのです。
私は、少し寂しく感じました。あんないい人が死ぬなんて。今でも思い出す体験でした。
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