お迎えに来た人

お隣に、９０代のおばあちゃんが住んでいました。
お嫁さんと不仲だったため、気晴らしにうちに遊びに来ては５分ほどで帰って行く、そんな近所付き合いでした。

夏のお盆が近づいた頃、おばあちゃんは老衰で天寿を全うされました。嫁姑問題で不仲だったためか、お葬式も最小限の小さなものでした。
お式の翌日、おばあちゃんの私物は家の外に放り出され、気の毒で仕方ありませんでした。

それから１か月ほどして、おばあちゃんの四十九日が近づいた頃です。
明け方、廊下に面したガラス戸に人影が写りました。私は夢うつつの中で、ぼんやりと窓を見ていました。

人影はこちらを向くと、語りかけて来ました。
「ありがとうね、もうね行かないといけないからご挨拶に来たの」

ああ、お隣のおばあちゃんか、ご丁寧に、と心の中で問いかけました。

「お迎えにね、三女が来てくれたの。私ね、三女が亡くなってたって知らなかったの。息子も、嫁も誰も言わないから、本当に驚いたの。でもね、もう良いの。ありがとうね。」

そう言って、おばあちゃんは旅立って行きました。
私は頷くと、そのまま眠ってしまいました。

翌日、母におばあちゃんのことを話しました。
「なんか、三女さんが亡くなってたって言ってたよ」と言うと驚いた様子で、
「あんた、何でそれ知ってるの？私も今朝、お隣の奥さんから聞いたばかりだけど、秘密にしてたみたいよ」

光の中のおばあちゃんのそばには、確かに女性のシルエットがありました。
私はそっと手を合わせました。