のんべえ幽霊との邂逅
投稿者:じぇむ (8)
短編
2022/12/16
11:21
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私は霊感が強いほうです。
姿を見るよりは、ハッキリと声を聞くタイプです。
声は、耳で聞く音と言うより、頭の中に響くテレパシーのような感じです。
右側から左側に抜けるように、声は聞こえて来ます。
だから、聞きたくなくても聞こえるので厄介なところでもあります。
それは、1月の寒い雨の降る日でした。
家の外の道路にも人影はなく、お正月明けの夜は静かに時を刻みます。
私も夜更かしせずに、眠りに付きました。
明け方頃、何かの気配でふと目が覚めました。
玄関から入って来たそれは、天井の方をのろのろと彷徨い、私の方に向かってくるようでした。
その瞬間、金縛りに遭いました。驚いていると、リビングの方からそれは寝室の方にやって来ました。
そして一言、「外は寒いからさ~一杯飲みたいよねえ」
ええ?私は驚いて、天井を見上げましたが姿は見えません。
それは寝室の窓から、外へ出て行ったようでした。
金縛りもすっかり解けていましたが、怖さより可笑しさのほうが上でした。
世の中には、成仏出来ない気の毒な魂もあると思います。
無念さはひとそれぞれ、残した家族のことだったり、やりかけた仕事だったり。
でも、お酒が飲みたいってどうなの?
気の毒と思えばいいのかどうか、迷います。
のんべえ幽霊は、どこかで一杯ひっかけているのでしょうか。
不思議な体験でした。
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