幼馴染と本の不思議な縁
投稿者:take (96)
私が中学二年生の時の話です。
私は読書が好きですが、その頃はお小遣いが限られているため、よく近くの図書館を利用していました。
その日も図書館で本を選んでいると、一冊の絵本が目に留まりました。
それは幼稚園のときに仲が良かったHくんが持っていて、私はその絵本が好きで、家に遊びに行くと必ず読んでいたのです。
懐かしいなと思い手に取り、ふと思い出したことがありました。
Hくんは本を大切にする子でしたが、変な癖があり、カバーがついている本の、カバー下の背の部分に上下一列に、爪でバツ印をつけるのです。
なんとなく気になって、カバーの下を確かめると……あったのです、爪でつけたバツ印が。
おかしなことがあるものだと、絵本を元に戻して、本を選んで歩いていると、「〇〇(私)じゃないか?」と、声をかけてくる同年代の少年がいました。
それはHくんでした。私は小学校入学前に家を引っ越していたので、会うのはそれ以来です。
聞くと、彼の家も中学生になるのを機に、この街に引っ越してきていました。
中学校は別でしたが、家そのものは私の自宅から二駅くらいの距離です。
ひとしきり再会を喜び合った後、先ほどのことを思い出し、絵本を彼に見せてみました。
「俺のだ……」とHくんは驚いていました。彼の家族は揃って本好きで、増えすぎた本はリサイクルに出したり図書館に寄贈するらしく、件の絵本はまさに彼が所有していたものでした。
以来、Hくんとはまた親交が始まり、今も続いています。単なる偶然といえばそれまでですが、幼少時にふたりで不可思議な現象に遭遇したこともあり、なにか因縁めいたものを感じられずにはいられないのです。
将来の旦那様じゃないですか