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必殺一生懸命さんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

花子さんの怒り
短編 2022/11/20 11:58 2,277view

俺が中学生だった頃の話だ。
当時俺のクラスでは、とある都市伝説のようなものが流行っていた。それが「トイレのハナサワ 花子さん」というもの。お察しの通り、あの有名な「トイレの花子さん」と似たような話なんだが、ちょっとだけ違うところがある。その都市伝説というのが、こういうものだ。
まず、夜の6時以降に学校の女子トイレに行く。そのトイレもどこでもいいわけじゃなくて、特定の個室がある。そこのトイレは不思議なことにドアが閉められ、内側からカギがかかっているから、ドアをコンコンコン、と3回ノックする。それからドアに向かって、「花子さん、遊びましょう」と呼びかけるんだ。ここで間違えてはならないのが、3回その台詞を繰り返す、ということ。早口言葉みたいにすらすら言うんじゃなくて、普通に人に呼びかけるテンポで伝えるのもポイントだ。
それでも返事は返ってこないんだが、それが普通だ。しかしその後、また同じくらい間をおいて「ハナサワ 花子さん、遊びましょう」と言うんだ。
そうしたら、扉の向こうから「なあに?」って聞こえてくる。

……唐突なようだが、都市伝説はここで終わりだ。誰もいるはずのない夜の学校のトイレ、しかも鍵のかかった個室から返事が返ってくる……というのが怖いのだが、まあ中学生らしいといえばらしいシンプルさってとこだろうか。

そのシンプルさが中学生の心に突き刺さったのだろう、俺のクラスではそれにトライするのが大はやりしたんだ。ほとんどクラスの全員が一回はやったことがあるんじゃないかというくらいのレベルで広がっていた。
しかし、残念なことに何かが起こることはなかったんだ。時々トイレの窓の外に人影を見たとか、個室の中から唸り声が聞こえてきたとかの話もあったが、正直眉唾物だった。

そこでいよいよ本題ってところだ。
俺もこれをやってみようと思ったんだよな。

雰囲気が出るからということで、ひとりで夜の学校に侵入。

噂のトイレに向かってみた。そこは女子トイレだが、男の俺が入ろうとしても止める人はもちろんいない。俺は普段とは違った状況にハラハラしながら、例の個室の前に立った。
ドアは閉められているが、見るだけでは鍵がかかっているかどうかわからない。俺は慎重に鍵の部分を持つと……軽く力を込めて、グッと引っ張ってみた。
すると、カタンと音がした。ドアが開くことはなかった。
噂通り、本当に鍵がかかっている。注意書きも何もないから、鍵が壊れているわけでもないだろう。
まさか、これは……。正直少し半信半疑だった俺も、いよいよ信じる方に傾いてきてしまった。
もしかしたら俺は今日、自分でも信じられないような経験をするのかもしれない……
俺はごくりと唾を飲み込み、噂の手順を開始した。
ドアをコンコンコンと3回ノックし、ドアに向かって「花子さん、遊びましょう」と呼びかける。噂通り、返事が返ってくる気配はない。うまくいっているのかわからないが、このまま進めてみるしかないだろう。次は、「ハナサワ 花子さん、遊びましょう」と呼びかけるところだ。うまくいっていれば、そこで「なあに?」と聞こえてくるはず。
何が起こっても驚かないように、俺は大きく深呼吸をして……意を決して、呼びかけた。
「ハナサワ 花子さん、遊びましょう」
そしたら、本当にドアの向こうから声が聞こえてきた。

しかし、噂通りの「なあに?」ではなかった。

「うるさい!!!」

それは、めちゃくちゃに怒った女の子の声だった。
小学生、中学生くらいの女の子がブチ切れた、ドスのきいた絶叫だったんだ……。

ここからはほとんど妄想みたいな俺の考察だが……
俺に呼び出されたハナサワ 花子さんは怒って、俺に「うるさい!!!」とキレたんじゃないだろうか。
じゃあ、なぜいきなり怒り出したのか?
それは俺を含め、クラスメイトの行いに関係すると思う。
この噂が大はやりしたことにより、クラスメイトの多くがこれを実践した。
それでほとんど毎日レベルで呼び出され、クラスメイトの遊びとして同じことを繰り返され……
それでさすがに怒りの限界がきて、ブチ切れたのではないだろうか。
人間だってそうだろう、悪戯半分に同じことを毎日繰り返されて、いい気分になることはないだろう。

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