狩の真実
投稿者:kana (210)
これはハンティングを趣味とする友人のFさんから聞いた話。
年の瀬も迫る12月15日、早朝午前4:00である。
凍てつくような寒さに目が覚めた。
他の7人も既に起きて、薪ストーブに火を入れている。
歯医者・建築屋の社長・ハタ屋の親父・スーパーの店員等々、職業は多種多様だ。
とりわけ屠場に勤めている男は、このプロジェクトの中では一人輝いている。
イノシシを獲ったとき、現場でこの男が解体して、
それぞれのリュックにわけて持ち帰るのだ。
イノシシをバラス手際の良さは神業である。
社会に於いては、身分に隔たりがあるが猟場では全員平等である。
社長が自分の会社に勤めている平社員に対しても○○さんと呼ぶのは常識だ。
特に初心者に対しては親切この上ない。
その日山鳥が一羽しか獲れなかった時は、新撃(しんぶち)に持たせて帰すのが通例になっている。
それだけではない。恐いのだ。
暴発事故を起こして、自分や猟仲間を殺傷する事がままある。
例えば、一列に並んで移動するとき、先頭は銃口を前に向けて、
2番目を歩く者は、左に向け、3番目は右に、最後尾を歩く者は肩に担いで後ろに向ける。
先頭は山を良く知っている者。最後尾は年長者でチームのリーダーだ。
従って初心者は後ろから2番目について、リーダーの指導を受ける。
打ち合わせが無くても自然とこの隊列になる。
ボラ(藪)の中を歩く時は、脱包(薬室に入っている実包(つまり弾)を抜く)してから
口の開いたコウカンを仲間に見せる(弾は入って無いよと)。
引き鉄の覆い(トリガーカバー)を手でくるむようにして行進するのもハンターの心得だ。
今日はイノシシ猟だ。
9年前、群馬県のある農家がイノブタの養殖を始めたのだが採算がとれず、
雌3頭牡2頭を山に放してしまったらしい。
これが大繁殖して、山里の農家に甚大な被害をもたらしているのだ。
かつては我々のチームだけでも1シーズンに35頭もの日本鹿を担ぎ下ろした事もあったが、
今ではまったく見かけなくなった。
久しぶりのイノシシ猟だ!巻き狩りだ! 心が躍る。
kamaです。
こちらのお話の解決編として「-事件記者 朽屋瑠子-」という作品も書かせていただきました。
こちらの作品に登場したリーダーが主要メンバーとして登場します。
合わせて御覧ください。