優しそうな奥さんの正体

以前、近所に住んでいた奥さんと仲良くしていました。なんでも、ご主人が単身赴任とかでほとんどいないんです。お子さんも既に独立していて、悠々自適な生活を楽しんでいるといつも話していました。

家庭菜園も得意なようで、庭にはトマトやナスが植えられていて、季節毎に様々な花が咲いていました。私もガーデニングにハマっていたので、話が合ったんです。

実は、その頃我が家では変な事が起きていました。それは、夜になると庭で水の音がするんです。

慌てて見ても誰もいなくて、ただしまってあったホースがなぜか庭の真ん中に落ちていたんです。

おまけに、私が育てていた花やハーブが次々と枯れていくんです。

育て方が間違っていたのかなとか、もしかして土が合わないのかと色々な事を考えました。

その事を奥さんに言うと、いつも慰めてくれたんです。

そんなある日です。たまたま夜中に起きて２階の窓から外を見ると、誰かが庭にいるんです。そして、庭のホースを使ってプランターにバシャバシャ水をかけてます。私は急いで両親を起こして、ベランダから懐中電灯を当てました。そこには、あの奥さんがいるんです。

何をしていたのかと聞けば、奥さんはしどろもどろになって、水をあげただけと言いました。これで、わかりました。奥さんは、毎夜のように来ては必要以上に水を与えていたんです。

あんなに優しそうだったのに、ショックでした。結局、その奥さんとはそれから一言も言葉を交わす事はしませんでした。

噂では、私が引っ越してから近所で問題を起こしたらしく、夜逃げ同然にいなくなったそうです。