のっぺらぼうの男
投稿者:千心 (17)
数年前に私は某病院で看護師として勤務をしていました。
私は病棟勤務で入院されている患者さんの年齢層は30代から高齢の方と幅広く、長期入院されている方が多くいました。
夜勤を週に一回ほどやっていて今回はその夜勤での出来事です。
以前から患者さんの間で、人がいないはずのベッドで見た事もない人が寝ていた、入院患者ではないお婆さんが廊下で立っていた、人が壁をすり抜けていった、など噂が絶えなくあり謂わゆる幽霊を見た、という話です。私も患者から時折聞いていて、職員同士でもたまに話題にはなっていました。
私としては病院ですから亡くなった患者さんも当然いて、もし居るとすればその方々ではないかと、ですが私には霊感がなく幽霊なんぞは一切見たことはありません、そんな話を聞いても「そうなんだ〜」と特に関心もありませんでした。
ですがある日の夜勤での出来事で初めて恐怖体験をする事になりました。
消灯前の見回りをしていた時、廊下ですれ違った高齢の男性患者さんに「あそこの角に見たこともない男の人が立っていたよ」と、廊下の角を指差して言うのです、不審者が居てはいけないと思い人相などを聞くのですが顔は目も鼻も無いのっぺらぼうで、男性のような大柄の体格だったと、それは幽霊だと言うのです。私は気持ちが悪いと思いながらも半信半疑であまり気に留めず、見回りを続けました。
もちろん幽霊なんぞは見ませんでした、すると別の患者さんからも全く同じ事を私に言ってきました。
二人の患者さんの話から、顔がのっぺらぼうで大柄の男の人、と言っていることがよく似ているのです、その二人の患者さん同士はあまり接点が無い事から口裏を合わせている様子はなく、同じ人を見たのでは、と少しゾッとしました。
その後は特に何もなく普段通りに時間が過ぎて行き、夜中の2時を回った時でした、私がナースステーション内で業務をしていた時に一人の女性高齢患者さんが少し慌てた様子で来られました。
訳を聞くと、トイレに行った帰りに顔がのっぺらぼうの男の人が後をついてきて困る、と。私はその患者さんの後ろを確認しますが誰も居ません、するとその患者さんが今私の後ろに回って立っているから絶対に振り向かないで欲しい、と言うのです。私はゾッとして鳥肌が立ちました。
ここからは私と患者さんのやり取りです。
私: 今私の背後にいるの?
患者: いるよ
私: 振り向くとどうなる?
患者: わからない、でも振り向かない方がいい
私: その人は怒ってるの?
患者: 何となく
私: でも顔はわからないんだよね?
患者: うん
私: その男の人は今も私の後ろにいる?
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