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心霊

Aさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

廃倉庫の白い顔
長編 2022/06/11 23:32 9,970view
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俺はAとでも呼称してほしい。

俺は友人のBとCと共によく廃墟を探索して、その様子を録画する趣味があった。

初めて廃墟に行ったのは高校一年の夏だったか、ちょうど心霊ブームに陰りが見え始めた時期に廃墟を探索し、ノスタルジーを感じるこの趣味に目覚めたのだ。

それからは時折三人で冒険するように県内の廃墟を巡ってはスマホの動画を回して記録を撮り、帰宅後に映像を見てはワイワイと盛り上がっていた。

当時の俺達はワクワクとドキドキが両立する感覚がとにかく楽しかったんだ。

勿論、未成年と言う立場と自動車免許が無い事から廃墟探索は決まって休みの日中。
親に迷惑を掛けないために出動は朝、帰宅は夕方までを厳守していた。

ある日、俺達は山道脇にある廃倉庫に目をつけた。

モルタルの剥がれた外装に草臥れた土地回り、黄ばんで所々割れた窓ガラスに暗く荒れ果てた内装。
これは面白そうだと興味を掻き立てられた。

休日の早朝、俺達は自転車を漕いで現場に到着すると、さっそくスマホで動画を回した。

「おー、雰囲気あるなー」

俺達の中でも廃墟マニアなBが恍惚な表情で廃倉庫を見上げると、その廃れ具合を下から上まで吟味している。

俺とCは呆れながらも鞄から懐中電灯を取り出すと、Bにも一つ手渡してさっそく中へ入ろうとそれぞれ点灯した。

すると、Bが何やらスマホを廃倉庫の上部、横長な高窓に向けてポカーンとだらしなく口を開けたまま固まっている。

「おい、いくぞ」

「……なあ、あそこなんか居ねえ?」

俺がBのケツを叩くと、Bは微動だにしないまま高窓を指差した。

俺は怪訝に思いながらもCと顔を見合わせ、二人で高窓の辺りを見上げてみるが、所々黄ばんで薄汚れている以外に目立った変化もなく、Bが何を指差しているのか分からなかった。

「中入ろうぜ」

「お、おう」

痺れを切らせたCが率先して半開きのシャッターを潜り中へ踏み込むと、俺がCに続き、最後に少し遅れてBが駆け寄るように追従した。

中に入ると凄い量の埃が充満していたのか空気が不味い。
日射しに浮遊する埃を視界に納めながら、中を一望する。

元々資材の加工場なのか廃棄されたような錆びだらけの機材や加工前の木材や角材が乱雑に置かれたまま、吹き抜けのフロアが広がっている。

角地にはグレーチング階段とでも言うのか、金網の階段が壁沿いに取り付けられていて、それを上れば二階周りを歩ける体育館でよく見かけるようなギャラリー通路に繋がっていた。

通路に上がれば先程Bが外から見上げていた高窓も内側から見下ろせるだろう。

「すげー」

Cは工場見学宛ら機材を見て回ってははしゃいでいたが、Bは高窓の一つを見上げたままスマホで撮影していた。

俺はと言うと、とりあえず動画を回しながら入口から袖の備品の山々を撮影し、道すがら発見したものを手あたり次第にカメラにおさめていく。

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