廃倉庫の白い顔
投稿者:A (4)
「二階行ってみようぜ」
「てか、その階段大丈夫なん?抜けねえよな?」
金網状の踏板をCが足蹴にしている様子を窺いながら、俺も階段へ足を運ぶ。
「おーい、B。上行こうぜ」
Cが振り向き様に声を掛けると、Bは天井を見上げたまま固まっていた。
今度は何が見えたんだ?と俺はCと苦笑しながら天井を見上げる。
一階から吹き抜けの天井は、鉄梁や骨組みが規則的に並んでいてまさしく倉庫だなという印象だったが、やはり目を止める物は何もない。
「B!」
「…あ、ん?おう」
Bは目を擦り再び天井を一瞥していたが、すぐに振り返り階段までそそくさとやってきた。
「お前さっきからおかしいぞ」
「まさかオバケとか見えちゃってる?」
俺とCはからかうように半笑いで話しかけたが、Bは複雑な顔に眉根を曲げて「悪い悪い」とおちゃらけた。
階段を上ると金属板を踏み込む音が倉庫内に反響し、俺達は底抜けしないか足踏みで強度を確かめながら二階のギャラリーにやってくる。
随分と年期の入った黒く汚れた高窓から射す陽光は、黄ばんで見えて不潔に見える。
ギャラリーを進みつつ倉庫内の様子をカメラ越しに見据え、吹き抜けの一階や天井の梁なんかを見回した。
「雰囲気あるよなあ」
「いつから放置されてんだろな?」
時折立ち止まっては高窓から外を覗き込み、山道の茂みや雑草まみれで黒ずんだ駐車場なんかを撮影する。
すると突然、
「うわあっ!?」
Bが上擦った悲鳴を上げながら金網の床に尻餅をついた。
結構ドスンと強い転げ方をしたものだから、俺達は床が抜け落ちないか気が気じゃなかったが、どうやらこの程度の衝撃じゃ何ともないようだ。
「ビクッたわー、なんだよB!」
「いや、えっと……あれ?」
Bは何かを探すように周囲を見渡していたが、俺はBが悪戯でふざけているのだと思っていたからため息混じりに強めに注意する。
「あんまふざけてると怪我するぞ!こういった所は老朽化すごいんだからな!」
しかし、Bは心ここにあらずといった面持ちで俺の事を見ている。
いや、俺の背後、高窓を見ているのか?
俺は反射的に振り返ってみるが、ただ薄汚れた窓と、窓から見える外の山々の景色が見えるだけで、何も変わった所はない。
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