足を掴む白く透ける手
投稿者:テラー (26)
短編
2022/04/11
14:20
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和歌山県の三段壁は自殺の名所です。過去に心中した男女が岩に彫った遺書もあり、なかなか雰囲気があります。
当時一人旅をしていた私はこの三段壁に寄りました。とても天気のいい日で、断崖から見下ろす海は絶景です。
自前のカメラを構えて夢中でシャッターを切っていたものの欲が出て、「もっと前に出たい」と思い立ちました。幸い周囲に人はおらず、見咎められる恐れはありません。
そこで断崖の縁に立ってカメラを持ち直した所、急にめまいを覚えました。
「危ない!」
咄嗟に重心の安定を図ってあとじされば、今度は足首を掴まれました。「えっ?」と思って見下ろすと、白く透ける手がかかっています。
瞬きして見直すと手は消えており、凄まじい恐怖がこみ上げてきました。
これ以上ここにいたら引っ張られると確信し、大急ぎで逃げ出しました。のちに現像した写真には、白っぽい影のようなものがたくさん映りこんでいました。
私の足を引っ張ったのは、三段壁に犇めく自殺者の霊だったのでしょうか?
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