歩行困難
投稿者:りう (54)
短編
2022/03/25
01:00
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朝の通勤ラッシュ時、駅の地下道は尋常じゃない人の数で
ごった返している。ぶつからないように歩くのが困難だ。
いつも先のほうまで視線をやって、人に当たらないように避けながら歩く。真っ直ぐ歩き続けるのなんて不可能だ。
そんな中、少数ではあるが、まったく避けずに歩く人もいれば、スマホに夢中で下を向いたまま歩く人もいる。
少し前、女性を狙ってわざとぶつかる男性がいるっていうニュースをみたことがある。それを見た時、その男性の気持ちが分からないでもないなぁ、と思った記憶がある。
ある朝、いつものように人を避けながら、会社を目指して足早に歩いていたところ、後輩からメールが来て、取引先から苦情連絡が入っているから急いで来てほしいとのことだった。
その苦情内容が詳細に書かれていたので、それを必死に読みながら急いでいると、誰ともぶつかることなく歩けた。
「すんません。今日だけです。」
と心の中で思いながら長い地下道、下を向いてスマホを見ながら歩き続けていると、横に気配を感じた。
それにハッと気づいて顔を横に向けると、
スーツで黒縁メガネ、ハゲ頭のオッサンが真横を並走していた。
立ち止まって「わぁ!なん?」と驚きながら発っすると、オッサンは
「今、見ないとダメなんか?」
とだけ凄い形相で言って、私と反対方向に立ち去った。
多分 毎朝、私と同じ思いで歩いてるんだろな…
怖かった…
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