だいだら
投稿者:誠二 (20)
短編
2022/03/07
12:39
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父方の祖父母が住んでいるのは岩手の田舎の村です。
夏休み中は家族で帰省し、地元の子たちと一緒に田んぼでザリガニや蛙をとって遊んだのを覚えています。
8月上旬、肝試しをする事になりました。
近所の子たちで集まって神社に行って帰ってくるだけの他愛ないイベントですが、みんなワクワクしていました。
大人がでしゃばってきたら興ざめなので、うちの人にばれないようにこっそり家を抜け出て集合します。
「よし、みんなそろったな。一列に並べ」
ガキ大将の号令に従って縦一列になり、田んぼを突っ切る畦道を歩いてる時に異変が起こりました。
ふいに蛙の泣き声がやみ、泥土の匂いを孕んだ生臭い風が吹き付けてきたのです。
子どもたちは一様に青ざめました。ガキ大将も不安げです。
「誰かいんのかっ!」
彼が虚勢を張って怒鳴った直後……遠く離れた田んぼから巨大な黒い影が起き上がり、夜空を圧します。
「だいだらだあ!」
田んぼを覆った影を目の当たりにした瞬間、子ども達は散り散りに逃げ出しました。
好奇心に負けて振り返った私は、黒い影がドロドロに溶け崩れ、田んぼに広がっていくのに驚愕しました。
後日祖父母から田んぼにでる妖怪、だいだらぼっちの話を聞かされました。
私たちが会ったのはだいだらぼっちだったのかもしれません。
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