ハッピーバースデー
投稿者:C (15)
私が小学校に上がった頃、バツイチの母に恋人ができました。
彼……Aさんはとても優しく面白い人で、私はあっというまに懐き、本当のお父さんになってほしいなと思い始めました。
家に二人でいる時、母がこっそり教えてくれました。
「Aさんは三年前に奥さんと娘さんを亡くしたの」
「なんで?」
「事故よ」
母はそれ以上語りたがりませんでした。
忘れもしない7歳の誕生日、その日は母とAさんがケーキを買ってお祝いしてくれました。
ケーキ屋さんからもらってきてくれた蝋燭は7本です。
カラフルな蝋燭をケーキに刺している時、「あれっ」と母が声を上げました。
「店員さん間違えちゃったのかしら、三本多いわ」
箱の中から追加で三本でてきた蝋燭を見下ろし、Aさんの顔がサッと青ざめました。
その後未使用の三本は脇にどけ、七本の蠟燭に火を点けたのですが、どんなに息を吹きかけても何故か炎が消えません。
「わかった、こっちの三本も仲間にもらいたがってるんだ!」
子どもらしい発想で残り三本をケーキにさして火を点け、フッと一息に吹き消しました。
直後、暗闇の中に見知らぬ女の子が現れました。
「うわああああ!」
Aさんはケーキをひっくり返して家を飛び出し、二度と戻ってきませんでした。
数年後、Aさんの奥さんと子どもは心中したのだと母が漸く打ち明けてくれました。
「娘さんの10歳の誕生日にガスを吸って自殺したのよ」
仕事人間のAさんは娘の誕生日にケーキを買って帰る約束を破り、二人を助けることができませんでした。
私の誕生日に化けて出たのは、人生でたった一度しかない10歳の誕生日をすっぽかされた娘さんだったのでしょうか。
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