有難い僧侶の火葬にて
投稿者:上龍 (34)
短編
2022/02/11
11:59
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不況の煽りで職を失った私は火葬場に再就職し、故人の火葬をして報酬をもらっていました。
ある日私が担当したのは地元で有名なお寺の住職の火葬でした。
この方は大変強い霊能力を持っており、生前は他県からもお祓いやお焚き上げを頼みに来る人が絶えなかったそうです。
しかし他のご遺体と変わらないので、他の故人と同じく手厚く火葬させていただこうと思いました。
ご遺体の火葬中は炉裏に回り火加減を調整します。そうしないと煙が出すぎてしまったり、身体の一部が焼け残ったりと失態をさらしてしまうのです。
煙突が吐き出す煙の量が多すぎたり黒く煤けていても近隣から苦情が寄せられます。
さあどうだろうと炉裏の窓越しに覗き込み、驚愕に言葉を失いました。火葬炉に仰向けたご遺体から紫色の煙が上がっているのです。
数年間火葬場で働いていますが、人間の身体から紫色の煙が出る現場など見たことがありません。
しかも炎が燃え盛る炉の中ではお経が流れています。
見間違いじゃないかと目を擦れば紫色は次第に薄れ、普通の白い煙に取って代わって読経も途絶えました。
その後は何事もなく火葬を終えてお骨上げするご遺族を見守りましたが……徳の高い僧侶の火葬の際は不思議なことも起こるのかもしれません。
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