地元の古墳が“幽霊のでる古墳”になった日
投稿者:スエヒロガリ (4)
私の地元には小さな古墳がありました。
西日本の田舎町で、小学校の生徒も100人以下の過疎地域です。それ故に学年を超えてみんな仲良く、学校の終わった放課後にみんなで山や海で遊ぶようなそんなところでした。
古墳があると知ったのは私が小学校3年生のとき。
「地域を知ろう」というような授業だったと思います。班別行動で、私達は地域の歴史を調べることになりました。
同じ班の男の子が「古墳があるの知ってる?」とみんなに話かけ、さらに「うちの近くでさ、ひいばあちゃんたちが世話してる」と言うのです。
私は“古墳”を“世話する”ってなんだ?と思いつつ、古墳は古いし、歴史ありそう!行こう!ということになりました。
その日の放課後、みんなで集まって古墳を見に行くことに。
その古墳は海の方にあり、山の方に住んでいた私は自転車で待ち合わせ場所に行きます。今でも覚えているのですが、とても晴れた良い天気でした。
行く道中で年下の男の子に出会い、古墳のことを話すと一緒に行きたいというので連れていくことに。
待ち合わせ場所に行くとすでに揃っており、なんなら私のように道中あった子を連れてきた子もいました。総勢8人くらいだったと思います。
古墳は海沿いの道を1本入った雑木林みたいなところにありました。周りを草や細い竹に囲まれ、大きさは縦160センチ程度、そこまで大きくはなかったです。
木の看板が立っていましたが、劣化が激しく、詳しくは読み取れません。
竪穴式住居のようなイメージで、入り口は石で作られていました。
思ったよりも暗く、冷たく、良い天気だったはずの空も何故かくすんで見えるような雰囲気でした。
「ひいばあちゃんたちはこの中に入ってるけど、何してるかは教えてくれない」
古墳が墓であることも知っていましたし、正直入りたくはなかったですが、男の子は恐る恐る中を覗き、私もそれに続きました。
中にはたくさんのお供えもの?と思しき飾りのようなもの、お花?のような造花のようなもの、そしてその中心に鏡のような丸いものがありました。
お墓というキーワードから骨を想像していた私はほっと一安心しましたが、あとから入ってきた子が「なんだこれだけ?」と言ってしまいました。
それを聞いてムッとしたのか、連れてきてくれた男の子が真ん中の鏡のような丸いものをガシッと取ってしまったんです。
鏡…というにはあまりに反射しないそれは子供の手のひらには大きく、勢いも余って落としてしまいました。
あっと思い、男の子のすぐ後ろにいた私が拾いあげようとしたとき。
見てしまったんです。
私と同じように鏡を拾いあげようとする、手を。
白く、細い手は私よりも先に鏡を拾い、元の位置へと戻しました。
連れて来てくれた男の子も同じものを見たようで、顔面蒼白。私もなにも声を発することができずにいました。
すると入り口の方にいた子たちには“鏡が勝手に戻った”というふうに見えていたらしく、「心霊現象だ!!」と騒ぎ始め、それが伝染し泣き出す子もいる始末。
大騒ぎになりましたが、男の子と私はそれでも黙ったまま、見たことを口にするのも怖かったのを覚えています。
騒ぎを聞きつけた大人たちにより、その日は解散しましたが“幽霊のでる古墳”として肝試しスポットになってしまい、今では鍵がついてしまったのだとか。
後日、あの男の子は相当怒られたらしく、古墳を調べるのは中止。班別行動での「地域を知ろう」のテーマは「学校の歴史」を調べることになりました。
あの手が何だったのか、“古墳の世話”とは何だったのか、未だに聞けずじまいです。
何か封印されているでしょうかね。