深夜三時の来訪者
投稿者:陰キャ道 (1)
前回同様、部屋の中は変化なく、記憶だけがはっきりと残っている状態でした。
下手に恐怖を感じなかったのが悪かったのでしょう、この時点で手を引いておけばよかったと、後に知る羽目になります。
更に数日後。
私はこの現象がどうしても気になって、悶々と日々送っていたのですが、もう一度だけ、次が最後だからと言い聞かせて、再度あの体験をしようと考え始めるようになりました。
そして遂に決行の日が訪れ、三回目の不思議体験へ望みました。
前回、前々回同様、同じくらいの時間に同じお酒を飲み、もう定期となった酔いが回り始め早々に眠りに就きました。
いつもと違い、何も起こらないまま、ただただ意識の覚醒だけが訪れました。
もちろん目は閉じたままで「なんだ今日は何も起こらないのか、ならこのままもう一度眠りに落ちよう」と諦めかけていたその瞬間!
『ガシッ』と私の両足首を、人間(恐らく)の手でつかまれました。
流石にこれには恐怖を抱かずにはいられず、パニックに陥りました。
その行為の、あまりの怖さに目を開けることも、声を発することも出せませんでした。
ひたすら心の中で「やめてくれ」、「もう勘弁してくれ」、「早く手を放してくれ」と願い続けました。
けれどその願いは叶わず、足首をつかまれたまま今度は、徐々に徐々に持ち上げられていったのです。
さっき以上に心の中で「助けて下さい」、「赦して下さい」、「もうやめて下さい」と叫び続けました。
けれど足の高さが丁度人の腰の高さまでくると、更に状況は悪い方向へ進んで行きました。
それに足下の方向に引き摺られて行くのです。
その方向には押入れがあり、当然進むことはできません。
ですが体は布団から少しずつ外れていき、だんだん押入れが近付いてきます。
駄目だもう助からないかもしれない、と諦めかけていたその瞬間、昔どこかで聞いたお経のようなおまじないが脳裏に浮かびました。
急いでその言葉を頭の中で唱えました。
けれどまだそれの歩みは止まりません。
更に集中して必死に唱え続けました、「どうか神様助けて下さい」と唱え続けました。
するとどうでしょう、願いが神様に通じたのか、足首にかかっていた力が薄っすらと弱まってきました。
それでも私は唱え続けました。
それを止めてしまうと、もう一度どこかへ連れ去られてしまうのではないかという恐怖に駆られて。
完全に足首にかかった力が消え、暫くしてやっと恐る恐る目を開けることができました。
そこにはなんと、一ミリも布団から出ていない自分の体が横たわっていました。
そして時計を見るとなんと前回同様三時でした。
全身汗でびっしょり濡れていることと、足首に痺れが残っている以外は何も変わっていなかったのです。
恐怖がなかなか冷めないせいで、睡眠を再開することもできないまま朝を迎えました。
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