深夜三時の来訪者
投稿者:陰キャ道 (1)
これは私が二十六歳の誕生日を、一人寂しく迎えた直後の出来事でした。
基本お酒が駄目な私だったのですが、新しく年を重ねたということで、もしかした何かが変わっているかもと、僅かな希望を胸にアルコール度数の低いお酒を購入し飲むことにしました。
案の定お酒を一杯飲み終えた頃には、顔が真っ赤になり頭痛もする始末です。
今日はもう駄目だなと、夜更かしを諦めて就寝することを決め、早々に布団に潜り込みました。
そして六畳一間の手狭な部屋の中心で、仰向けに眠っていると、突然『どんっ』という衝撃がお腹に起こり、意識が急浮上しました。
だけど眠気が強く、どうしても目を開ける気になれませんでした。
普通なら恐怖を感じてもおかしくない状況ですが、不思議と恐ろしくなかったのです。
お腹には依然何かが乗っており、何だろうと意識をそこへ向けると……どうやら猫くらいの大きさと重さの何か……暫くその何かを感じていると、どうやら赤ちゃんのような気配ということに気付きました。
すると不意に、私の右隣に髪の長い女性の気配が現れました。
確かに目を閉じていましたが、どうしてだかそれがなんとなく理解できました。
何の違和感もなく、そこに二人が居るのが自然だといわんばかりの状況に、唐突に終わりが訪れました。
ふっと隣の女性の気配が消え、続いてお腹の重さがすーっと霧散してしました。
はっと我に返り目を開けると、代り映えの無い暗い部屋だけが視界に映り込んできました。
何となく気になり時計を見ると、その針は三時を指し示していました。
時間を確認した直後、強い眠気に襲われてあっさりそのまま眠ってしまいました。
朝起きた時に、昨日のことの記憶がはっきり残っており、あれはいったい何だったんだろうかと考えてみても結局分からずじまいでした。
そんな体験から数日後。
もやもやした何かに誘われるように、もう一度同じ状況を作り出せば、何か分かるかもしれなと思い立ちました。
同じくらいの時間にお酒を飲み、笑えてしまうくらいあっさりと酔っ払い、床に就きました。
そしてそれは不意にやって来ました。
『どーん』
いきなりの衝撃に思わず布団から上半身を起こしていました。
啓上し難い苦しさに、何が起こったのか理解するのに時間を要しました。
言い表すなら、お寺の鐘を突く細目の丸太がお腹に衝突した感触です。
暫く鳩尾を突かれた反動で、酸素を供給すべく荒い息をしていましたが、なんとか呼吸と冷静さを取り戻しました。
周りを見ると、当然丸太は無く、寝る前と変わらない部屋の姿だけ。
慌ててパジャマをめくり、お腹を確認するも痣一つ見つかりませんでした。
ですがこの時も、驚きはありましたが恐怖を感じることはありませんでした。
そして時計を見ると、先日と同じ三時でした。
それからこの日もその後、強い眠気に襲われて朝を迎えることになります。
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