とある組の死体処理担当
投稿者:イエティ (51)
彼はそっと首に手をかけ、震える手で彼女の命を奪った。
そこからだった。
彼は彼女を手にかけた罪悪感からなのか、何がきっかけかは分からないが、この世のものではないものを見るようになってしまった。
特に現場の山はひどかった。
彼は車通りが少なく今後開発されないような地域の山を選定していた。
S県に3か所、M県に1か所、T県に3か所、A県に1か所。
いつも死体を埋めている近辺で、頭を撃ち抜かれた男、腹部から滝のように血を流している男、両手両足の爪がはがされ、顔が紫色に晴れ上がった男…。
俺がやったんじゃない。俺がやったんじゃない。
線香を焚きながらそう念じることで彼らはいつの間にかいなくなった。
それでも仕事をやり続けた。
まだまだ続けられる年齢で「辞める」と言ってしまえば、死体処理のノウハウを吐かされた後に埋められてしまうだろう。
彼は悲鳴を上げる体と心に鞭を打って仕事をした。
16年目の冬。
彼は50歳になった。
最後の仕事になるだろう。何故か彼はそう確信していた。
死体の重さは75kgってところだろう。
彼は何度も何度も休憩しながら、雪の降る山道を歩く。
相変わらず、見るに堪えない姿をした霊が徘徊している。
もう慣れたもので、いくら霊が現れようとも彼は動じない。
背中に背負った大きなスコップで、まずは雪を避け、土を掘る。
この時期の土は凍っていて掘りづらい。
4時間かけてようやく穴を掘り終えた。
めちゃくちゃ読み応えありました
ヤクザ×心霊
どちらも社会の暗部、アングラな想像力を掻き立てる要素故に、とても相性がいいものですね。
非日常感がいい塩梅に描き出されていて面白かったです。