とある組の死体処理担当
投稿者:イエティ (51)
長編
2021/12/02
16:32
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いつのものだか、肋骨のようなものを掘り当てた。
形が綺麗に残っていた。
骨格も、骨自体も細い。
ああ、彼女だ。
普段は目印があるため過去の死体を掘り当てることは一度もなかった。
しかし疲労と積雪の影響で、ここを掘ってしまったのだろう。
歯車が狂いだしたあの一夜、権力を得て彼女に再会したあの日、彼女を埋めたあの日。
走馬灯のように脳裏を巡った。
彼女の横に眠るのは、組長だ。
確認せずとも確信した。
いわゆる経済893と呼ばれる新たな若頭は、時代錯誤な考えを持つ現組長を早々に始末したかったはずだ。
発言力も今や若頭の方がある。
しかし組の進退を懸念していた組長は、無力なのに、いや無力故なのかトップの座に居座り続けた。
そうして彼の仕事人生も終わりを告げた。
幹部の一新とともに、時機を見て彼は引退した。
稼ぎ続けた資産は10億を超えた。
東北の田舎に引っ越し、小さな一軒家を建て毎日のんびり釣りをする生活を送った。
そんな私の釣り仲間が先月逝った。
最後に釣りをしたあの日、あれは小さな漁港での夜釣りだった。
嫌な気配をずっと感じていた。
それが霊的なものなのか、それとも彼の死を察していたのかは今となっては分からない。
彼は、振り返って一点を見つめて言った。
「彼女が呼んでいる」
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めちゃくちゃ読み応えありました
ヤクザ×心霊
どちらも社会の暗部、アングラな想像力を掻き立てる要素故に、とても相性がいいものですね。
非日常感がいい塩梅に描き出されていて面白かったです。