ある旅館での怖い話
投稿者:こより (3)
これは父が仕事の関係で1人で出張に行った際、泊まった旅館での不可解な出来事の話です。
その旅館は一見古びた感じはしましたが、「それも旅館の味だろう。仕事終わりに泊まるだけだし、気にしなくていいか」と、特に気にもせず旅館の門をたたきました。
旅館のフロントで受付をすると、「今日のお部屋をご案内します」と中居さんに連れられてある部屋の前まで案内されました。
「お客様のお部屋は本日ここでございます。ゆっくりお寛ぎください」と言い、部屋に案内されました。
そこは1人で泊まるには十分な広さの和室で、少し古びた感じはしましたが何の変哲もない一般的な客室でした。
その際は特に何の違和感も感じず、「早くお風呂にでも入ってご飯を食べてゆっくりしたい」という気持ちでいっぱいだったそうです。
それから準備をしてお風呂に入り、部屋で1人で食事を済ませたあと、寛ぎながらテレビを見ていました。
時間も23時を過ぎたため、「明日は早く起きなくてはいけないからもう寝よう」と部屋の全ての電気を消し、中居さんが準備してくれていた布団に潜り込みました。
元々幽霊や怪奇現象には全く興味もなく、家でそう言った類のテレビを見ても「こんなの偽物に決まってるよ」と全く信じていない父ですが、電気を真っ暗にした途端、「何か」得体の知れないものが部屋の隅にいるような気がきたそうです。
しかし特に何か見えるというわけではなく、なんとなくその部屋の隅だけが異常に気になっていました。
君が悪いなぁと思いましたが、出張の疲れなどもあり、「疲れが出てるだけだろう。幽霊なんて存在しないし、たまたまそのように感じただけだ。気のせい気のせい。」とすぐに気を紛らわし、そのまま眠りにつきました。
仕事疲れもあったので、そのまますぐに父は寝入ったしまったようです。
それからどのくらいの時間が経ったかわかりません。父は突然、夜中にふっと目が覚めました。するとすでにその時には全く身体が動かず、自分が金縛りにあっていることに気づいたそうです。
「なんだこれは、金縛りか?全然動かないぞ。それに…。」
自宅でも疲れた日には金縛りにあったことが何どなあったようですが、この日の金縛りはいつもと明らかに違うものでした。
それはなぜかというと、目には見えないが明らかが自分の身体の上に乗っかってる感覚を覚えたからです。
その部位はちょうど父のお腹あたりにいるようでした。
今までそのような自分の身体に何が乗っているというような金縛りの経験をしたことがなかった父は、一瞬で「消灯した直後に感じた何者かだ。」と察したそうです。
「やはりあの時、何がいたに違いない。早くここから逃げ出さないとまずいことになる。」と瞬時に感じすぐに身体を動かせようと意識を集中させることにしました。
しかし、身体は相変わらず動かずに、身体の上の重みも変わらずいました。
次第にその重みが少しずつ増していき、最初はお腹の上に感じていた頭が徐々に頭の方まで上がってくる感覚を覚えたのです。
少しずつ少しずつ「何者か」が移動し、父の顔まで迫ってきていました。
父は「まずい、このままだと何か起きるかもしれない。重みも重くなっているが、少しずつこちらに移動してきている。誰か、誰か助けてくれ!」と叫びました。
しかし、もちろん声も出ず誰もいないため助けも呼べません。
父はどんどん冷や汗をかき、身体の硬直も強くなってきました。
どことなく息も苦しくなってきて、苦しさを覚え始めてきました。
父は今までの人生では経験したことがない状況に、凄まじい恐怖を感じていました。
目を固くつぶり、「俺の身体よ、早く動いてくれ!お願いだ!助けてくれ!何かが、どんどんこっちに忍び寄ってくる…!」と心の中で何度も何度も念じました。
すると、その願いが通じたのが指先が微かに動いたと同時にフッと身体全体の力が抜けていきました。
そして、その金縛りが解けたと同時に、身体の上に乗っかっていた「何者か」の気配も重さも感じなくなっていたそうです。
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