光の戦士
投稿者:GENGO (32)
元会社の同僚・Aの話。
私と同期入社だったAは勤続ウン年の後に会社を辞めた。
退社理由は本人の事情という種類のもので、
けしてへんな理由ではなかった。
いわゆる円満退社だった。
なのでAと親しかった人や、退社後のAのことを真剣に
心配してくれる人にはAは理由をちゃんと説明していた。
だがなかには興味本位で、野次馬的にAに
「ネエネエなんで辞めるの?」とか「辞めてどうするの?」
と聞いてくる人も何人かはいた。
そういうあきらかな野次馬にはAは口から出まかせを言ったらしい。
「実は俺は光の戦士なんだ。」と。
「俺は今まではただのサラリーマンだった。
だが実は光の戦士としてこの世に生まれてきたのだ。
光の戦士は、この世に悪魔が復活してきたときに覚醒し、
同じように覚醒した仲間とともに悪魔と戦う運命を背負っている。
悪魔の復活が近づいたので、俺は仲間を捜し集める旅に出る。」
実はこれ、昭和の時代に一部のオタク(当時はそんな名称はなかったかも)
の間で流行った夢物語というか都市伝説の類のエピソードで、
もちろんAは冗談で野次馬をからかうつもりでネタとして利用したのだ。
これを言うと、聞かされた相手はその後はまったく話しかけてこなく
なったので、ラクでいいやと思っていたそうだ。
しかしネタとしては難解過ぎたかシャレにならなかったのか、
一部で「Aが狂った」というウワサが流れた。
なので、私がAに「ああいう発言は止めたほうがいい」と忠告し、
Aもそれからはもう言わなくなった。
Aが会社を辞めてもう何年もたつ。
私もAが辞めた数年後に辞めた。
だが、最近になって元勤務先の総務課にAの連絡先を問い合わせる
電話が何件か架かってきたそうだ。
辞めた人間とはいえ個人情報を安易に教えられないので
相手にはAの電話番号とかは教えていない。
だが複数回にわたって問い合わせが入るので、
Aに「教えてもいいか?」と総務課が確認してきたのだ。
ちなみに総務課の人が、問い合わせ主に
どこの誰なのかとか問い合わせ理由とかを問うと、
「自分も光の戦士なんです。」
と言われたそうだ。
なんか笑ったけどよく考えると怖いなこれ…
ゴレンジャー的に集まっちゃえ(笑)
奇遇にも、オカルトブームの時代にこういう人が大勢いて、問い合わせが殺到しすぎて廃刊になった(らしい)雑誌もある、と、今日岡田斗司夫氏のデビュー作で読みました。
なんか笑えない話。
冗談にも言ってはいけないことってあるんだな。って思った。
なにげに怖い話。