死んでも好きなもの
投稿者:YUCHI (9)
私のおばあちゃんの話です。
おばあちゃんは子どもの頃、とてもやんちゃな子どもだったそうです。
イタズラばかりして、池の中に入って行ったり、ペットの犬に化粧をしたり。いつも家族に怒られていたそうです。
当時のしつけは厳しかったので、叩かれたり、物置や押し入れに閉じ込められることが多かったそうです。
おばあちゃんの叔母、お母さんの妹は、優しい人でした。
おばあちゃんが叱られて閉じ込められているといつも、物置や押し入れからおばあちゃんを出してくれました。
そして「おいで」と手招きして金平糖をくれました。叔母さんは金平糖が何よりも好きだったようです。叔母さんは叱られて落ち込んでいる時には必ずピンクの金平糖を2粒おばあちゃんにくれました。そんな優しい叔母さんをおばあちゃんはとても慕っていたそうです。
叔母さんはおばあちゃんが6歳の頃、入院することになりました。
体が弱く、少し体に無理がかかると苦しそうに息をしていました。
ある時、胸が苦しいと訴えたので病院に連れていくと、肺に癌が見つかったそうです。
当時は今程医療も進歩していません。手術することも難しく、治療は困難だと宣告されました。
叔母さんの体調はみるみる悪くなり、寝たきりの状態になりました。
おばあちゃんはよくお見舞いに行きました。
叔母さんが一番好きな金平糖を持って行きましたが、「おばちゃんは具合が悪くて食べられないから、代わりにお食べ」とおばあちゃんに食べさせたそうです。
半年程後、叔母さんは危篤状態になりました。家族が病院に集まると、それまで目を瞑っていた叔母さんは目を開けて、おばあちゃんに「こっちにおいで」と手招きしたそうです。
叔母さんは「一緒に金平糖、食べてあげられなくてごめんね。おばちゃんが死んだら、お仏壇に金平糖をあげてちょうだいね。あなたにも分けてあげるから」と声をかけました。その日の明け方、叔母さんは亡くなりました。
おばあちゃんは、優しかった叔母さんが亡くなり、とてもつらかったそうです。
叔母さんが亡くなってから最初のお盆に、おばあちゃんは約束どおり金平糖をお仏壇にあげることにしました。
手を合わせ、金平糖をのせた時、急にお仏壇から手が出てきて、おばあちゃんの手をつかみました。
おばあちゃんは、驚いて後ずさりした瞬間、先程の手は消えました。
怖くて家族に話しましたが「また嘘を言ってるわ」「あんたが欲張りで金平糖を取ろうとしたから、おばちゃんに怒られたのよ」と笑い、誰も真剣にとりあってくれませんでした。
おばあちゃんは叔母さんが亡くなり、自分の味方はいないのか。叔母さんも私を怒ったのかもしれないという考えが一瞬頭をよぎりました。
でも、おばあちゃんは、どうしても叔母さんが怒って手を出したとは思えなかったそうです。なぜならおばあちゃんにとって叔母さんはとても優しい人だったからです。
確かに金平糖は叔母さんの大好きなものでした。死んでも、金平糖は好物だと言えるでしょう。でも、叔母さんが亡くなるときにおばあちゃんに声をかけてくれたことを考えると、叔母さんはおばあちゃん金平糖をくれようとしたのではないかと思ったそうです。
おばあちゃんは、怖い気持ちもありましたが、お仏壇の前に行きました。
手を合わせてお仏壇を見ると、不思議なことが起こっていました。
おばあちゃんがあげた時は確かに封が開けられていなかったはずの金平糖の袋が開いていたそうです。
さらにいつもおばあちゃんにくれていたピンクの金平糖が2粒、袋からこぼれていたそうです。
おばあちゃんは驚きましたが、やはり叔母さんは一緒に金平糖が食べたかったんだと思いました。おばあちゃんは「おばちゃん、金平糖ありがとう。いただきます。」と言って金平糖を食べたそうです。
それから必ずお仏壇には金平糖を置くようになりました。怖い思いをすることももうありませんでした。
心が温まる話ですね