壊せないアパート

私が小学生の頃は森や林、空き地があちこちにありました。その当時は私達お転婆娘達の遊び場でした。

男子達も秘密基地だの倒れた木、頑丈なツル等を利用してアスレチックを作ったりターザンごっこをしたりしていました。

そんな私達の遊び場も段々とマンションや住宅地に変わっていってしまいました。

でも１カ所だけ広い空き地にポツンとアパートの廃屋が壊されずに残っていました。
その廃屋は、けっこう大きな病院の裏手側に建っていて以前は看護士達が住んでいたアパートだと聞きました。

子供ながらに何で壊さないのかな？と思ってはいました。そして何だか嫌な感じもしていました。

次第にその廃屋は子供達にお化け屋敷と呼ばれる様になりました。かなりの子供達が廃屋の中に入ってはキャーキャーと騒いで慌てて逃げ出て来たりしていました。

噂では２階の左から２番目の部屋に入ると気分が悪くなるとか、変な声が聞こえる、寒気がするとか様々な話を聞く様になりました。

ある日、私の1番の仲良しの友達が私達も中に入ってみない？と言い出しました。私は嫌な感じがしていたので必死に止めようよ！と友達に言っていました。

そこへ私の兄と友達のお兄さんが偶然来たのです。2人も中に入ってみようと思って来たそうです。私は嫌な感じはしていましたが兄が一緒ならば大丈夫だろうと入る事にしました。

かなり壊れていたし荒れ果てていたので本当に不気味でした。

１階から順番に入って行き、前部屋制覇しようと私達４人の恐怖の探検が始まりました。

１階を前部屋入って出て来た時は何事もなく、友達兄妹は楽勝と言って、はしゃいでいましたが、私と兄ははしゃぐ気になれず帰りたい！と思っていました。

私と兄は本当に２階にも行くの？止めようよ！
床が腐っていて落ちてケガしたら大変だから止めようよ！と本当に必死に止めました。

友達兄妹は私達を怖がりだなぁと言って、じゃあ自分達だけで行って来るから待っていてと言って２階に上がる階段をのぼって行きました。私と兄は外で待っているのも怖いくらいなのに２人はよく行ったよね…とか話をしながら待っていました。

２階の1番左側の部屋の窓の所から２人は何もないよ、大丈夫だよ！と叫んで来ました。
私達は次の部屋だよ、気をつけてね！と叫び返しました。

時間的に２人は次の部屋に入っているはずなのに窓から２人の楽勝！と言う叫び声は待っても待っても聞こえて来ません。

ん？どうしたんだろうと兄と心配していると、真っ青な顔をした２人が階段からおりて来ました。どうしたのか？聞いても２人は早くこの場所から離れようとしか言わずに歩いて行ってしまうのです。慌てて私と兄はついて行きました。

廃屋の敷地から出て２人に何があったのか？どうしたの？と聞いても、とりあえず今日は帰ると言うだけで、少し早歩きで帰ってしまいました。

私も兄も何が何だか状態でしたが、とりあえず私達も家に帰りました。家に帰ってから母親に友達兄妹の話をすると、興味本位でそんな事したら駄目じゃない、危ないから二度と近づいては駄目だと言われました。

次の日は友達兄妹は学校を休みました。兄と廃屋が原因かな？と話しました。
確か、2,3日は学校を休んでいたと思います。

明日お休みだったら電話かお見舞いに行こうと考えていたら友達は休まずに学校に来ました。友達のお兄さんも学校に来ていました。２人が元気そうに来たのでホッとした事を覚えています。

私は友達に廃屋で何があったのか？を聞いてはいけない様な気がしたので、友達が話してくれるまで廃屋の話題はしませんでした。

私が廃屋の事を忘れた頃に友達が内緒の話があると言い始めました。
何だろう？と考えていると友達がいきなり、見たの、私達兄妹は見ちゃったの！見えちゃったの！と興奮気味に話して来ました。

私が、もしかして廃屋でのこと？と聞くと頷き、友達は２階の２番目の部屋の扉を開けたら女の人が天井からぶら下がっていたの。と話してくれました。
嘘！本当に見たの？友達は頷くだけでした。