奇妙なマンションの外階段
投稿者:峰 (38)
しかし、いざマンションに着いてみると、不思議なことが起こったそうだ。
というのも、女性の住む階へ行こうとエレベーターのボタンを押したのに、待てど暮らせど、エレベーターが全く降りてこないのだ。
おかしいなー、故障ですかねー、それともどっかで引っ越し作業でもしてるのかな、などとBさんと話していたが、そうしている間にもどんどん時間は過ぎる。AもBさんも暇ではない。このままでは帰れないぞと、すっかり困ってしまった。
そこで、Aはエレベーターが使えないならと、外階段を探しに行ったそうだ。
エントランスのすぐそばにある外階段。
それを目にした瞬間、なぜか引き寄せられるように、Aは昇りはじめた。
Bさんが気がついて、「えー?どうしても階段で行くの?」と言いながらも、人が良いので着いてくる。
階段を昇っているとき、Aはふわふわと夢心地のような、なんとも不思議な気分だったという。
数階分ほど昇ったときだろうか。
突然Aは、この階段がいつも夢に見るマンションの階段と同じだと気がついた。
階段のデザインも、階段から見える風景も、下を見下ろした時の感覚も全く同じだったと言う。
ゾゾゾゾーっと寒気が走り、Aは慌ててBさんに、
「そろそろ中に入りましょう!エレベーターも直ってるかも!」と言って、次の階で非常扉を開けた。
夢とは違い、すんなり中に入れたと言う。
そして、不思議なことに、今度はエレベーターもすぐに降りてきて、Aは女性の部屋へたどり着くことができた。
チャイムを鳴らすと、風邪で寝込んでいたとは思えないくらいきちんと身だしなみを整えた女性が出てきた。
しかし、Aだけではなく上司のBさんもいると気がつくと、「あっ……」という表情を浮かべたそうだ。
Aは、女性からのジーッと見つめられるような視線に気づいたが、あえて鈍感なふりをして、笑顔で当たり障りのない言葉をかけた。
女性も、やがてAから目をそらすと、そのまま特に何も言わず、中に誘うようなこともなく、ごく普通の様子でAとBさんの2人にお礼を述べて、その場は穏便に終わったそうだ。
そして、その後は、女性からAに気のあるそぶりは無くなったという。
女性はしばらく勤めていたが、一年が経つころ、ひっそりと辞めていったそうだ。
未だに、Aはあの夢と女性がどういう関係だったのかわからずにいる。
夢の中で追いかけてきた中年の女が、あの女性だったのかも確信が持てない。
ただ、Aはそれっきりあの夢を見なくなった。
「あの日、一人でマンションに行かなくて本当によかった。」
と、Aは今でも、折りに触れて語っている。
予知夢の一種なのかな?
予知夢に近いですね。
こういう人と出会うというメッセージだったのかも┅?