真っ赤なワンピースの女、地元で話題の心霊スポットにて
投稿者:F16 (7)
私は地元の大学に通っていました。
その時に、地元でそこそこ話題になっていた心霊スポットに、学科の仲間と行ったことがあります。
その心霊スポットは、国道を逸れた田舎道を真っ直ぐ行った先にある、山の麓のお墓でした。人気が無いため街灯もほとんどなく、夜には辺りは真っ暗になりました。
そこに、女の霊が出るというのです。女の霊は夜な夜なお墓を徘徊し、服装は、真っ赤なワンピースを着ているということです。
噂によると、お墓から五百メートルほど離れたところにある小さな池で、入水自殺をした女の人が、居場所を失い、お墓を歩き回っているとのことでした。
ただ、それはあくまで噂で、その心霊スポットのことは知らない人の方が多かったのです。
だから、私たちも本当に軽い気持ちで、そのお墓に行きました。所詮は作り話だろうと思っていましたし、メンバーの中には、それを証明してやろうと生きこんでいる者もいました。
移動手段は、車でした。大学の最寄り駅から十キロは歩かなければならないので、レンタカーを借りました。
メンバーは五人。全員が男で、皆気さくで良い奴でした。
運転を担当したのは私で、このグループの中で一番仲の良いAという友人と、レンタカーを借りたあとで、大学の最寄り駅に残りのメンバーをピックアップしに向かいました。
Aは私と同じく一人暮らしをしており、住んでいるアパートが近いため、しょっちゅう遊んでいました。お互いの家を行き来する仲でした。
今回のことを企画したのも、確かAだったように記憶しています。Aは、このグループのムードメーカー的存在でした。
夕方に残りのメンバーを駅から乗せた私たちは、そのまま例のお墓に向かいました。途中、コンビニによってちょっとした食べ物を買いました。
気分は、プチ旅行、あるいはドライブという感じでした。大学生にとって、心霊スポットに行くというのは一つの楽しいイベントだったのでしょう。みんなが終始楽しそうにしていた、そんな行きの車内でした。
日が落ち切ったころに、そのお墓に到着しました。当時は確か秋で、残暑のせいかまだじめじめと蒸し暑かったような気がします。
ただ、流石にお墓に着くと、なんとなく肌寒いような、そういう感覚を覚えました。
もちろん、気持ち的なものはあるでしょうし、そもそも時間が時間ですから、昼に比べて気温は下がっているでしょう。
私たちは車を降りると、持参していた懐中電灯を持ってお墓の中に入りました。
そのお墓は、至って普通のお墓でした。心霊スポットというわりに、あまりに普通で、しかも規模が小さいお墓だったので、なんだか拍子抜けしたことを覚えています。
明かりを頼りに進んでいくと、結構放置されていると思われるお墓もあり、それは雰囲気を出していましたが、むしろ「世話してあげないと駄目だよなあ」なんて、話題の種になっていました。
結局、お墓を回るのは三分とかかりませんでした。いや、実際にはもう少し早かったかもしれません。
本当に規模が小さく、しかも、何か立ち止まって見るようなところもなかったので、一言でいえば「お墓を散歩した」という感じでした。
やっぱり噂は噂だよな、と私はがっかりしたような、でも少しほっとしたような不思議な気持ちでした。
ただ、他のメンバーはとにかく落胆したようです。確かに、レンタカーを借りてまで行くような場所ではなかったかもしれません。
「もうちょっと遅い時間が良かったかもな」
「深夜とか?」
「うん」
Aと私はそんな話をしました。
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