山の神を怒らせちゃいけない

浅黒い肌に白んだ目、しわくちゃの顔。
歯がない口は笑っているのかなんなのか、ニタァっと笑っているようにも見えた。

あからさまにやばいもの見た俺は恐怖でガタガタ震え出した。
ようやく純度100%の「ごめんなさい」を念じたよ。
そこから体感で10分くらいだろうか。

囁くような枯れた声で「さぁー…さぁー…やぁー…」と聞こえてきた。
川の流れる音もあって断片的だったし、風の音かと思ったが
あのじいさんが出しそうな声だ。

目を開けようか、でも開けたらあの顔がまた・・・
なんて考えているうち、急に視界が赤くなった。

わずかに水面から出ている膝や腹、顔が熱くなる。
太陽にギラギラ照らされている感じだ。

ぱっと目を開けると先ほどまでの暗い雰囲気とは打って変わって
真夏の太陽が辺りを照らしていた。

慣れない強烈な日差しに目ががんがん痛む。
体も難なく起こせた。

俺の横にはAとHがいた。

二人は、俺より早い段階であのじいさんを見たらしく、
初っ端から猛反省で俺より早く許しを得たのだと思う。
水辺に降りようとしている段階で、

少し上流の方からこっちを見ているのを発見したんだと。

俺は視力が悪いのが災いしたようだ。

俺らは体を拭いて、また歩きだす。
ものの30分で車に着いた。

怖かったけど、不思議で神秘的な体験したな～とキャンプ道具を車に積み込んでいた。
なんとなく、晴れやかな気分だった。

そういえば、あのじいさん、神様なんだろうけど既視感があったんだよね。
日本中探し回ればあんなじいさんいそうなもんだけど、
この前ジ〇リの某神隠し作品見てるときにビビッときた。
「よきかな～」で有名なクサレガミ？の顔とほぼ一緒だった。