山の神を怒らせちゃいけない

絶対制作陣のうちの誰かここで同じ経験してるだろ…と思った。

と同時に、俺はこの作品を二度と観れない。とも思った。
思い出しちゃうから。

最後に俺らが歩いてきた沢沿いの一本道。
入り口に立って目をつむって手を合わせたんだ。

お世話になりました。すみませんでした。
また来ます。みたいなことを各々念じながら。

あんなことがあったわけだから、深々と20秒くらいかな。
突然、山から
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」

みたいな山鳴り？雄叫び？が聞こえてきた。

かなりビビりつつも、応えてくれたのかな、と思い目を開けた。

一本道の奥の方から、あのじいさんがナタみたいなものを振り回しながら
走ってくるのが見えた。

ヨタヨタと木々にぶつかりながらニタァと不気味な表情を変えず
一目散に俺たちに迫る。

火事場の馬鹿力っていうのか、俺たちはとんでもない速さで車に戻った。
50mくらいだっただろうが、当時の加速力と最高速は世界記録を超えていただろう。

暑く蒸された車内。
裏腹に俺たちは冷や汗をだらだらと流していた。

全速力で山を下り、
前方に車を見つけたときはようやく安堵した。
思い出すかのように車内の暑さに参り、窓を全開にした。

が、すぐにそっと窓を閉じ、エアコンに頼った。
あの雄叫びがこだましていたのだ。
山の神を怒らせちゃいけない。

後日談。
木を蹴った時の足をそれぞれちょうど3日後に怪我をした。
AとHは利き足が右だから右足、俺は左だから左足。
俺とAは打撲と切り傷程度だったんだが、
木を折ったHはばっちり骨折してた。
一緒にいたわけでもないしこれは山の神の祟りかな。