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不思議体験

グレートリングさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

心を忘れた科学には 君の名は
短編 2026/11/02 21:15 68view

『ブラックマン博士に怪しいところはないのですね』
大崎探偵と災害対策課の課長の会話は続いていた。
『昆虫を使って廃墟からガレキを撤去する話は本当です』
大崎探偵は調査結果について報告した。
『昆虫は集めたガレキで巣を作り、その中に卵を産む』
『私には詐欺としか思えないのだが』
俺にもそう思える。常識人ならそう考えて当然だろう。
『しかし詐欺だとすると、博士に金銭的メリットがないのです』
『ふ〜む』
課長は頭をひねった。
『確かに博士とは成功報酬の約束をほとんどしてない。こんな詐欺があるだろうか?』
無報酬の詐欺があるはがなかった。
『成功報酬をほとんど要求していないなら、少しは要求しているのですね』
北風が二人の会話に割って入った。
『彼女は有能な探偵です。彼女の質問に答えてあげてください』

大崎探偵は北風を信頼していた。
『それは昆虫の巣が作られた土地を博士の名義にすることです』
巣の面積は100平米ほどだ。約30坪、畳60枚くらいである。
『それはこれから出来る巣についても同じですか?』

『住民は不動産の権利を放棄して町から避難した』
課長は答えた。誰も廃墟の町の固定資産税は払いたくないだろう。
『すると博士に土地の権利を譲渡する約束をしたのですね』
『あの時は約束するしかなかった』
課長は青ざめていた。事の重大さにやっと気づいたようだ。
『たかが100平米の土地でしょう』
一人だけ事情が理解できない俺は気楽に言った。会議室にいた3人の視線が俺に突き刺さる。
『昆虫の巣はガレキの多い場所に作られる。大型施設があった跡地だ』
大崎探偵は渋い顔で言った。
『避難民が帰ってくれば建物を再建する。昆虫の巣は再建の邪魔になるはずだ』
俺にはまだ理解できなかった。ホテルやデパートの片隅に昆虫の巣があるくらい構わないだろう。

『片隅とは限らないわ。敷地の中央かも知れないじゃない』
北風は恐い顔で俺を睨んだ。
『それは大変だ』
俺にもやっと事態が飲み込めた。
『現代の二十面相は賢いな』
昭和の二十面相は宝石や美術品を盗んだが、現代の二十面相は不動産を盗むのか。
そのとき事務員の女性が会議室に戻って来た。
『給金を支払うに当たってお名前を教えてください』
『俺の名前は太陽です』
俺は迷いもなく答えた。
『はっ』
事務員は静止した。
『ニックネームでなく本名を教えてください』
いや太陽が俺の本名なのだが。
『彼の本名は大河陽一郎です』
またしても北風が助け舟を出した。そうか、俺の名前は大河陽一郎だったのだ。

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