奇々怪々 お知らせ

不思議体験

グレートリングさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

続死神の副業  守護天使
短編 2025/03/02 16:13 726view

第五話 守護天使
『どうしてここまで親切なのか?』
犯人は死神に尋ねた。死神は生きている人間を天国に送ったりしないからだ。
そもそも天国にいる家族に電話させるのだって特別のことである。
それは俺も疑問に思わなくもなかったが雷神三郎(死神の名前)が世界一優しい死神だからと単純に考えていた。
『それはなボソボソ』
死神は犯人の耳元に口を近づけると小声で何か言った。
『なるほど』

俺にはなにも聞こえなかったが犯人は納得したようだ。
このとき死神は『大崎は守護天使のスマートフォンを使って電話してきた。神の世界で守護天使は死神より階級が上だから頼みを断れなかった』と言ったのだ。守護天使とは人間の運命を見守り導いてくれる有り難い天使のことだ。
『俺には教えてくれないのか』
もし俺にこの話が聞こえていたら教え子のHが俺の守護天使だと気づいただろう。
それなら走馬灯が終わった後でHが俺を覚えていたことや、歩行者天国でHを助けようとしたら俺の運命が大きく変わったことの説明がついたはずだ。
人力車が走り出すとき犯人は『この恩は一生忘れない。Hさんにもお礼を言っておいてくれ』と言った。
『どうしてHの名前を知っているのか?』と尋ねようとしたとき、人力車は異次元のトンネルに吸い込まれ壁の穴は跡形もなく塞がっていた。
納屋警部が警官隊を引き連れて最上階に来たとき、犯人も死神も異次元に消えて俺だけが残されていた。

『説得を試みたが犯人の自殺を止められなかった』
俺はあらかじめ用意したセリフを言った。
犯人逮捕こそ逃したが事件を解決した功労者として俺は警察から表彰された。お陰で通り魔未遂事件の容疑は問われないことになった。
それどころか納屋警部は『あんな特技があるなら警察に協力して欲しい。正式な警官でなくても非常勤の顧問でもいい』と熱心に勧めるのだ。
俺は大学に復学して小学校教師になるつもりだったが、大学に通うにも学費が必要だ。大学に通いながらでもいいならという条件で引き受けることにした。
しかし死刑囚だった俺が警察の顧問になるなんて人生なにが起こるかわからないものだ。まるで誰かに運命を操られているような気分だった。
             完結

1/1
コメント(1)
  • 投稿者のグレートリングです。
    第二作目もなんとか完結できました。これからもボチボチ投稿を続けてゆきますので応援してください。

    2025/03/02/16:19

※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。

怖い話の人気キーワード

奇々怪々に投稿された怖い話の中から、特定のキーワードにまつわる怖い話をご覧いただけます。

気になるキーワードを探してお気に入りの怖い話を見つけてみてください。