小学三年生の頃、私は奇妙な体験をした。
これは、心霊なのか、はたまたヒトコワなのかいまだにわからない体験談である。
近所のマンションに野田君という仲の良い友達が住んでおり、ほぼ毎日といっていいほど遊んでいた。
場所は近所の公園。当時、熱中していたカードゲームで飽きもせずにずっと対戦しており、冬の寒いときは、鬼ごっこやかくれんぼなどをして体を動かしていた。
楽しいからこそ毎日のように遊んでいたが、遊びの種類もマンネリ化して、少々新鮮さに欠けてきていた。
とある日、いつものようにかくれんぼをしていたときのこと。
私が鬼になり、十秒数え野田君を探すことになった。探すとはいえ、いつも遊んでいる公園なので、隠れ場所は大体わかってしまう。
「みーつけた!」
「えー、もーかよー」
掃除用具や町会で使う備品などがしまわれている、灰色の大きいコンテナの後ろに隠れていた野田君。
「だって隠れる場所なんてここくらいしかないじゃん」
広さはある公園だが、ブランコ、滑り台、砂場と少しの草むら。身を隠す場所など限られていた。
「あはは。てかさ誰か呼ばない?二人じゃすぐ終わっちゃうし」
当時は携帯を持っていなかったこともあり、誰か友達を呼ぶとなると、直接家に行かなければならなかった。
遊ぶ人数が増えるに越したことはないが、誘いに行く億劫さを感じ渋っていたところ、見覚えのないお兄ちゃんが
「ぼくも遊びに入れて」
と声をかけきた。
突然、声をかけられ私も野田君も戸惑った。
私は野田君の知り合いかと思ったが、野田君は誰?という顔をしている。どうやら、このお兄ちゃんは本当にたまたま声をかけてきたらしい。
正体はわからなかったが、特に断る理由もなかったので、そのお兄ちゃんと遊ぶことにした。歳は私たちよりも少し歳上に見える。小学校六年生くらいだろうか。
「なんでも言って。なんでもやるよ」
明るく話しかけてくれるお兄ちゃん。初対面ではあるが、すぐに馴染めそうなくらい人柄が良かった。
「じゃ鬼ごっこやりたいから、鬼やって!」
「いいよ」
どちらかが逃げて、どちらかが鬼しか選べなかった鬼ごっこ。それが二人とも逃げられるようになると、それだけでも遊びの幅が広がったような気がした。
「じゃ、次はかくれんぼ!それも鬼やって!」
じゃあ次は、じゃあ次は。私たちのお願いを一切拒否することなく、とことん付き合ってくれるお兄ちゃん。
遊びすぎた小学生が、心細くなる時間帯。
オレンジ色の太陽が公園を照らしていた。
「つぎなにする?」
「あそびたいけどそろそろかえらなきゃ」
「まだあそぼうよ」
「でもぉ‥」
私と野田君は、返事に困った。
もちろん、私たちもまだまだ遊びたい。だがしかし、門限がある。お兄ちゃんには制限時間がないのだろうか。すると突然
「死ねと言われれば死ぬよ」
と言い出したのだ。
考えもしなかった提案。そんな提案、私も野田君も受け入れるはずはない。
野田くんは
「そんなこといえないよ」
と少し怯えている。
「ん?ほんとにできるよ?」
お兄ちゃんは、冗談で言っている様子はない。
「もしもだよ。もし、やってみてって言ったら‥?」
野田君は恐る恐る口にした。
「うん、いいよ」
するとお兄ちゃんは、こちらが弁解する暇もなく、公園の前の大通りに向かって走り出した。車は勢いよく走っており、そんな状態で飛び出したら即死。
「まってまって!!!」
私たちは必死に声を出すと、声が聞こえていないかのように、お兄ちゃんは走るのをやめない。
私たちは、顔を背けた。
自分達のせいではない。お兄ちゃんが勝手に走りに行ったのだ。だから責任はない。
そういい聞かせながら、しばらく目を背けていたが、おおごとになっている様子が感じられない。車の音が虚しく聞こえる。目を背けたのは数秒。片目をゆっくり開けると、目の前には何事もなく車が行き交っている。
野田君と私は、ただ呆然とその光景を見ていた。
「お兄ちゃんは?」
身を隠す場所といえば、公園内の草むらくらいだ。だが、いくら体を縮こませても、小学生の体が隠れるほど鬱蒼としてはいない。
誰からの返答もないまま、私たちは夕陽に照らされた公園に取り残された。
























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