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妖怪・風習・伝奇

バクシマさんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

バズ美(前編)
長編 2026/09/29 02:36 62view

……夕暮れどきの小学生の通学路。ランドセルを背負った低学年の少年がひとりで下校している。車一台がぎりぎり通れるぐらいの狭い道。周りに大人はいない。
 少年の帰路の前方に、季節外れのロングコートを着た、長い黒髪の女が通せんぼをしているた。
 少年は、いぶかしげに感じたが帰るには女の横を通るしかない。少年が目線を合わせないように素通りしようとしたその刹那、女に肩をぐっと摑まれた。
その女は大きなマスクをしていた。そしてグッと顔を少年に近づけて
「ねぇ……わたし……きれい?」そう少年に尋ねる
「う、うん。マスク美人だと思うよ」少年は悪気なく答える。
 それを聞くと、女の目は怪しく歪んだ。そしておもむろにマスクを外した。女の口唇は耳まで裂けている。
「ひ、ひぃ!」
少年は小さな悲鳴を上げた。その怯えた様子を見て女はニタリと笑う。
「これで……」

「のう!そこの姑獲鳥(こかくちょう)みたいにすらりとしたお嬢さんよう!一緒に麝香(じゃこう)でも焚き上げんかいのう!」
仙人風の爺が少年と女の間に割り込む。
「ひ、ひぃ!」
突然の異物の出現に、女の裂けた口唇の隙間から恐怖の声が漏れる。

少年は女が動揺している隙に、夕暮れの向こうへ逃げだした。
通学路にポツンとたたずむ口裂け女と仙人風の爺。
「さあ、今よ。思うままにアピールしなさい」
どこからか女の声が聞こえる。
「のう!そこの九尾の毛並みを彷彿とさせる美しい御髪のお嬢さんよう」
爺はおもむろに着物をはだける。

「儂……きれい?」
 爺の着物がハラリと地面に落ちて上半身が晒される。痩せて、たるんだ皮膚が露わになった。
「……いや別に……年齢相応な感じよ……」
口裂け女の言葉を聞いた老人の眼がカッと開く。途端に爺の筋肉が盛り上がっていく「こ……これでもぉぉォォォ!?」血管が浮き上がり、パックリと腹筋は割れ、大胸筋はピクピク痙攣する様は、まるで上半身そのものがニタリと女に笑いかけているようであったそうな。
「のう……触ってみんかぁぁ!?」
「いぎゃああああああ」
口裂け女はもんどりを打ち、転げるように逃げ出した。そして夜の帳に消え去ってしまった。
老人は悲しそうな表情で、その様を見送っていた。
 すると、電柱の裏からバズ美が現れる。
「口説き文句が独特ね。さぁ、次いくわよ」
それに頷くと、老人は足下の着物を悲しげに拾うのだった。

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