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心霊

川辺に咲くさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

ノイズ
長編 2026/09/07 20:29 156view

声が近づいてくる!
そんな錯覚におそわれ、堪らず両耳からイヤホンを外したその時、勢い余って片方が指の隙間からこぼれ落ちました。
「あっ!」
慌てて行方を目で追いかけると、イヤホンは2、3回弾みながらコロコロと転がり、橋から川へ落下するギリギリ手前で止まりました。

拾わなければ。
そう思って、一歩踏み出したそのとき気づいたのです。
転がったイヤホンのすぐ向こう。
コンクリート製の欄干と地面の間。
わずか20センチほどの高さしかない隙間に、
…何かいる――
暗い隙間からこちらを見ている。

そんなはずない。
川の水面は遥か…10メートル以上も下を、音もなく流れています。
一歩近づいて、それが人の顔だと分かりました。
濡れた髪が頬に張りつき、ところどころ顔を隠しています。
肌は、青白いというより灰色に近く、白く濁った目と視線が合うと、口をぱくぱくと動かして、私に何かを喋りかけているようでした。

「ヒッ……」
私はすぐには動けず、やっとの思いで発したのは声とも呼べない音でした。
よろよろと数歩後ずさると車道側のガードレールにしがみつくようにしてやっと立っているという状態でした。
今まで行き来していた車の流れは、こんな時に限ってぷっつりと途切れ、まるでここだけが切り離されたかのように、異様なほどの静けさ。

「ザ……」
手に握りしめたイヤホンから、微かに聴こえてくるノイズ。

「ザッ……ザー……」
口が動く。
「ザ……ザザ……」
口が動く。
同じ、リズム。
つまり、今まで、この橋を通るたびに聞こえていたノイズは……

「ザァ…ザッザ、ザザ……」
「ネェ…コッチ、キテ……」
その時、『それ』がぬぅっと手を伸ばしてきたのです。
スローモーションのように動くやけに骨ばった指。
爪が何本か剥がれかけたその手は、地面を探るようにしながら段々とこちらに近づいてきました。

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