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心霊

川辺に咲くさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

ノイズ
長編 2026/09/07 20:29 185view

私を掴もうとしている!
そう思った瞬間、私は弾かれたように走り始めました。
もつれる足に転びそうになりながらも、
とにかく早く橋を渡りきらなくては!
なぜかそう思いました。
「ザ……」
小さなノイズ。
私は反射的に握りしめていたイヤホンを見ました。
「ザァ……ザッザ……」
「ネェ……マッテ……」
すぐさまイヤホンを川に向かって投げ捨て、振り返らず一気に橋を渡り切りました。

そこまで来ると、突然、車の走行音が戻ってきました。
何台もの車が、何事もなかったように走り抜けていきます。
私はその場に立ち尽くしたまま、しばらく動くことができませんでした。

自分がどこにいるのか確認するように、周囲を何度も見回しました。
コンビニの明かり。
信号機の赤い光。
遠くを走る車のヘッドライト。
全て見慣れた夜の街です。

大丈夫…大丈夫だ。
疲れていたのかもしれない。
幻聴だったのかもしれない。
幻覚だったのかもしれない。
もう橋を渡らなければいい。
半ば自分に言い聞かせるように、
「大丈夫。」
と繰り返しました。
何度も声に出しているうちに少しだけ落ち着き、なんとか家まで帰りました。

あれから1日、3日、1週間と時間が経過し、あまりにいつも通りの日常に、いつしか恐怖心も風化してきたころ。
もうそろそろ寝ようとベッドに入ったときです。
部屋の中から。
「ザァ……」
あの音が聞こえ、私は動きを止めました。
あの時、イヤホンの片方は橋に落としたまま、もう片方も川に投げ捨てました。
テレビは消えている。
スマホも充電器に繋いだまま、枕元で沈黙している。
なのに、どうして?
「ザッ……ザー……」
ノイズが聞こえる。
「ザァ……ザッザ……ザザ…」
そして――
「ネェ……コッチ……キテ…」

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