奇々怪々 お知らせ

心霊

川辺に咲くさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

ノイズ
長編 2026/09/07 20:29 186view

30歳を過ぎた頃から、体力の衰えを感じるようになりました。
このままではいけないと思い、運動不足解消のためにウォーキングを始めようと思い立ちました。
といっても、わざわざ時間を作るほどのことでもないので、仕事帰りに電車を一駅手前で降り、そこから歩いて帰ることにしたのです。

普段は使わない駅の改札を出ると、目の前には線路と平行に走る、片側二車線の国道があり、その道を南へ向かえば、自宅の最寄り駅に着きます。
いつもは電車や車で通り過ぎるだけの道のりは、途中で大きな川を跨ぐ橋があり、改めて徒歩で渡ってみると、高低差のある道のりが500メートル以上続くのでなかなかの運動量。
徒歩や自転車では越えるのが難儀だからか、夜の帰宅時間には橋の両サイドに設けられた狭い歩道を歩く人はほとんどおらず、自分のペースで歩ける事も仕事終わりのウォーキングにはちょうど良いと感じました。

最初の3日間こそ、これまでまじまじと見ることのなかった風景を楽しみながら歩いていましたが、4日目から急激に飽きてしまい、これはいかんと5日目以降はPodcastでお笑い芸人のラジオ番組を聴きながら歩くようにしてみました。
これがなかなか良く、見慣れてしまった景色に興を削がれる事なく、耳の中で紡がれてゆくテンポの良い掛け合いを楽しみながら、家まで帰ることができました。

夜のウォーキングが習慣づいてきた頃、ある場所を通ると、ラジオにノイズが入ることに気づきました。
「ザァ……ザッザー……」
ノイズが入るのは決まって、橋を上り始め、川の中ほどまで来たあたりです。
「川の上は電波が悪いのだろう。」
そう思って特に気に留めていませんでした。

その日も、いつものように橋を渡り始め、しばらくすると、ラジオにノイズが混ざり始めます。
「ザァ……ザッザー……」
いつものこと。
そう思っていたのですが、
「……ネ……」
何か聞こえた気がして足が止まりました。
イヤホンを外し、周囲を見回しましたが、人影はなく、車道をときどき車が通り過ぎていくだけです。
数秒立ち止まり、耳を澄ませましたが、結局、気のせいだったのだと思い、再びイヤホンを着け歩き始めました。
「ザァ……ザッザー……」
ラジオは相変わらず、ノイズを挟みながら流れています。
ところが、それからしばらく歩いたところで、また聞こえました。
「……ネェ……」
誰かが、呼びかけているような声?

私は立ち止まりました。

この、イヤホンから聴こえている……?
ボリュームを思い切り上げ、音に意識を集中させると――
「ネェ……コッチー……」
ガサガサとした雑音の奥から、確かにそう聞こえました。
「……こっち?」
思わず独り言をもらすと、それまで一定のリズムだったノイズが「ザザザザ!ザザザザ!ザッザ!ザッザ!」
と、急に激しくひずみ、割れた機械音のような音声が「キヅイタ!キヅイタ!コッチ!コッチ!」と、耳の中で反響し始めました。
お腹の底からせり上がるような悪寒を感じ、全身に鳥肌が立つのがわかりました。
ラジオ番組の録音音源を視聴しているのに、なぜこちらに呼びかけることができるのか…。
もはやラジオ番組はノイズにかき消され、
「ザッザ!ゴッヂ!ゴッチ!コッチ!コッチ!コッヂ!コッチ!コッチ!………」
拡声器を通したようなガサガサの音声が大音量で鳴り響きました。

1/4
コメント(0)

※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。

怖い話の人気キーワード

奇々怪々に投稿された怖い話の中から、特定のキーワードにまつわる怖い話をご覧いただけます。

気になるキーワードを探してお気に入りの怖い話を見つけてみてください。