『被害者が加害者の彼氏特定して凸ったの草』
『相手のSNS特定して彼氏まで割り出すとか普通に特定厨の動きで怖!』
『被害者面のSNS特定女、普通に引くんだが』
『どっちもどっち。お互い様だろこれ』
『てか、加害者とされてる人はほんとに犯人だったの?』
『この人からDM来てた!www』
画面をスクロールする指が震える。
ネットの人々にとって、私が受けた深夜の恐怖や個人情報の流出などどうでもよかった。切り取られたのは「彼氏を特定して破局させた」という事実だけ。
最初の巨大な被害は、「反撃の手を汚した」という一点によってあっさりと相殺された。
世間にとって、私は被害者ではなく、「相手の日常を壊した恐ろしい特定女」に変換されていた。
さらに恐ろしかったのが、当時の書き込みがスクショされていたことだ。
相談した知人には「彼氏さんにまで連絡したのは、ちょっとやりすぎだったかもね……」と気まずそうに目を逸らされた。
最悪なのは、私自身のアカウントが特定されたことだ。
私がDMを送った彼女のフォロワーの誰かが晒したのだ。
恐怖と絶望に耐えきれず、私はアカウントに鍵をかけた後、SNSを削除してネットから姿を消した。
だが、某掲示板のスレッドでは「特定女、鍵垢に逃亡www」「新垢探そうぜ」と、私を追い詰めること自体が新しいゲームとして消費され続けていた。
最終章
あの部屋には、もういられなかった。
元の書き込みが削除されても誰かが書き込みをスクショしていた。デジタルタトゥーだ。再度あの晒しの書き込みが拡散された。
また襲撃があるのでは、下にも気兼ねし、夜になれば階段を上がる足音に怯える日々。
私は逃げるようにアパートを解約し、別のマンションへ引っ越した。アカウントも、電話番号も捨てた。
新しい街での暮らしは静かだった。
しかし、心の平安は戻ってこない。
共用廊下の話し声や、チャイムの音、別の部屋の小さな生活音にすら、いちいち心臓を跳ね上がらせて過剰に警戒してしまう身体になってしまった。
季節は巡り、お正月を迎えた。
元日の朝。清々しい空気の中、一階の郵便受けから郵便物を取り出し、エレベーターの中でめくっていく。
1枚の年賀状で指がピタリと止まった。
表は私の宛名が書かれた何の変哲もない年賀状。
裏返すと、そこにはあの件のキャラクターが可愛らしい干支に扮したイラストが印刷されていた。
『あけましておめでとう!』
『今年も良い年になりますように!』



























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