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ヒトコワ

アマノさんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

私の話を描かないで
短編 2026/08/19 16:44 51view

 これは私が趣味で創作漫画を描いていた頃の話です。当時は勧善懲悪系のスカッとする話が流行っていたこともあり、私は同人活動をする人々のトラブルと、原因となる人物が何らかの罰を受けるという流れの漫画を描いてはSNSに投稿していました。創作仲間からはネガティブな人間関係の話ばかり扱うなんて悪趣味だと諌められることもありましたが、同人活動をネタにしていることもあって同じ趣味の方々から共感を呼び、読者からは概ね好意的な反応を貰えていました。そのため私は読者へネタ提供を呼びかけ、採用した話を漫画にすることを続けていました。

 ある日、一通の匿名メッセージが届きました。読点が非常に多く、長文で読みにくいものでしたが、要約すると「私の話を描かないでほしい」という内容です。
 しかし、その指摘は的外れなものでした。なぜなら私は漫画を描く際に脚色を加えていたからです。例えば、絵を描く人のネタを提供されたら、漫画にする時には小説を書く人や立体物を造る人へ変換していました。こうすればネタ元を特定されないのでリスク管理になり、脚色も加え易いというメリットがあります。読者が共感できるような話を作っているので、きっと送り主の心当たりがある出来事がたまたま私の漫画と重なってしまったのだろうと思いました。
 匿名でメッセージを受け付けていれば、変な文章が送られてくるのも良くあること。日々を過ごすうち、私はそんなメッセージが来たことすら忘れていました。

 しかし、それで終わらなかったのです。
 それから似たようなメッセージが、間隔を空けて届くようになりました。文章に癖があるので、おそらく同一人物だと思います。内容は最初と同様、「私のことを描かないで」というものです。一ヶ月おきだったメッセージが数週間おきになり、三日おきになり、毎日になる頃には、私は何かとんでもなく不味いことをしてしまったのではないかと焦っていました。
 創作仲間に相談すると、荒らしだからブロックして反応しないように勧められました。当然ですがブロック機能は使っています。しかし、どんな方法を使っているのか、似たような癖のある文体のメッセージが届いてしまうのです。

 私は漫画を描く意欲が失せてしまい、何も投稿せず半年ほど経った後、漫画を投稿していたアカウントを削除してしまいました。フォロワー数が多いので勿体ないと創作仲間からは残念がられましたが、なんとなく気味が悪いのと、創作仲間たちとは音声通話ができるサービスで繋がっているので消しても問題ないと考えたのです。

 それから一年後、私はとあるゲームにハマり、お気に入りキャラクターの二次創作を始めました。漫画を描く意欲が出たので新しくアカウントを作成し、しばらく漫画やイラストを投稿した後に同人イベントへ申し込みました。創作仲間たちは各々異なるジャンルで活動していましたが、私がイベントに参加することを報告すると喜んでくれました。
 イベントは無事に終了し、私は心地よい疲れと達成感を得て家に帰りました。このままシャワーを浴びて寝たいところでしたが、せめて今日中に本を買ってくれたフォロワーにお礼をしようとパソコンを開きました。

 一通の匿名メッセージが届いていました。
 異常な量の読点で区切られた、とてもとても長い文章の中に、
・ホール名とスペースナンバー
・ポスターに描かれたキャラクター

・私が作った本のタイトル
・私が着用していた服の色
といった情報が散りばめられており、最後の一文に
「やめてくれないからみることにした」と書かれていました。
 ゾッとして匿名メッセージサービスを退会しました。数日悩みましたが、せっかく作った二次創作用のアカウントも含めて、インターネットで活動していたアカウントやサービスは全て退会することにしました。

 数年経った今では自分がビビりだったなと笑い飛ばせるくらいになっていますが、当時は本当に怖かったです。サービスを全て退会してしまった過程で当時の創作仲間たちとも縁が切れてしまったので、この話をできる人が誰も居なくなってしまいました。
 今は全く別名義で活動しており、変なメッセージが来ることはありませんが、人間関係をネタにした創作はやめておこうと思っています。

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