「何か知ってるの?」
すると、
「お母さんから、絶対に言うなって言われてたんだけど」
と言った。
「昔ね。
あの家には、
あんたが知らない人が一人いたことがある」
僕は息を止めた。
「……誰?」
「知らない」
「知らないって……」
「お母さんにも聞いたけど、教えてくれなかった」
親戚はそう言った。
ただ、
一つだけ覚えていることがあるという。
僕が高校生の頃。
父が亡くなった後、
母と二人で暮らしていた時期。
近所の人から、
「夜中に男の人を見かける」
と言われたことがあったらしい。
でも母は、
「そんな人はいない」
と言っていた。
僕は高校生だった。
部活や友達付き合いで家にいる時間も少なかった。
だから、
何も知らなかった。
「それで、その男は誰だったの?」
「分からない」
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