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呪い・祟り

シンヤさんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

市松人形
長編 2026/08/28 16:17 177view

その言葉を、僕は、今も忘れられません。
電話を切ったあと、亮は自分でも動いていました。
ネットで、心霊相談に応じてくれるという、都心から少し離れたお寺を見つけたんです。
「幽泉寺(ゆうせんじ)」という、山あいの小さな寺でした。
電話口の住職は、静かな声で、亮の話を最後まで聞いてくれたそうです。
祖母のこと。人形のこと。事故物件のこと。夢のこと。
聞き終えた住職は、一言だけ、こう言いました。
「その人形を持って、一度こちらへおいでなさい」と
翌日、亮は菊を風呂敷で包み、電車を乗り継いで幽泉寺を訪ねました。
本堂の畳の上に、そっと風呂敷を解く。
現れた菊の顔を見た瞬間、住職の顔が、はっきりと、強張ったそうです。
しばしの沈黙の後

「……柏木さん」
住職は、低い声で言いました。
「この人形にはね。あなたのお祖母様の魂が、宿っておられます」亮の目から、涙が、こぼれました。
「やっぱり……やっぱり、ばあちゃん、俺のこと、見守ってくれてたんだ……」
畳に手をついて、声を殺して泣いたそうです。
けれど住職は、その背中に、静かに、こう続けました。
「――しかし」
亮は、顔を上げました。
「強い恨みを抱えた女性の魂と、長く同じ空間にいた。……その女性の魂が、
この人形の中に、入り込んでしまっている」

「この人形はもう・・・呪物です」

「このままでは、柏木さん。あなたの、命が危ない」

亮の中で、何かが、崩れる音がしたそうです。
「――なんとか、その女の人だけ、追い出せませんか」
亮は、掠れる声で、頼みました。
住職は、ゆっくりと、首を横に振りました。
「二つの魂は、もう、混ざり合っている。
水に落とした墨を、水だけ取り除くようなことは、できないのです」
「……じゃあ」
「お焚き上げを、いたしましょう。
それが、あなたを守り、お祖母様のためにもなる道です」
亮は、しばらく菊の顔を見つめていました。
祖母が六十年、大切にしてきた人形。
そこに宿った、祖母の魂。

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