その言葉を、僕は、今も忘れられません。
電話を切ったあと、亮は自分でも動いていました。
ネットで、心霊相談に応じてくれるという、都心から少し離れたお寺を見つけたんです。
「幽泉寺(ゆうせんじ)」という、山あいの小さな寺でした。
電話口の住職は、静かな声で、亮の話を最後まで聞いてくれたそうです。
祖母のこと。人形のこと。事故物件のこと。夢のこと。
聞き終えた住職は、一言だけ、こう言いました。
「その人形を持って、一度こちらへおいでなさい」と
翌日、亮は菊を風呂敷で包み、電車を乗り継いで幽泉寺を訪ねました。
本堂の畳の上に、そっと風呂敷を解く。
現れた菊の顔を見た瞬間、住職の顔が、はっきりと、強張ったそうです。
しばしの沈黙の後
「……柏木さん」
住職は、低い声で言いました。
「この人形にはね。あなたのお祖母様の魂が、宿っておられます」亮の目から、涙が、こぼれました。
「やっぱり……やっぱり、ばあちゃん、俺のこと、見守ってくれてたんだ……」
畳に手をついて、声を殺して泣いたそうです。
けれど住職は、その背中に、静かに、こう続けました。
「――しかし」
亮は、顔を上げました。
「強い恨みを抱えた女性の魂と、長く同じ空間にいた。……その女性の魂が、
この人形の中に、入り込んでしまっている」
「この人形はもう・・・呪物です」
「このままでは、柏木さん。あなたの、命が危ない」
亮の中で、何かが、崩れる音がしたそうです。
「――なんとか、その女の人だけ、追い出せませんか」
亮は、掠れる声で、頼みました。
住職は、ゆっくりと、首を横に振りました。
「二つの魂は、もう、混ざり合っている。
水に落とした墨を、水だけ取り除くようなことは、できないのです」
「……じゃあ」
「お焚き上げを、いたしましょう。
それが、あなたを守り、お祖母様のためにもなる道です」
亮は、しばらく菊の顔を見つめていました。
祖母が六十年、大切にしてきた人形。
そこに宿った、祖母の魂。
























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