「……少し、考えさせてください」
風呂敷で菊をくるんで、亮は、寺を後にしました。
アパートに戻った亮は、電気もつけずに、菊と向かい合って座っていたそうです。
「燃やせば、俺は、助かるかもしれない」
「でも、それは……ばあちゃんを、もう一度、殺すことじゃないのか」
「俺のために、ばあちゃんを、もう一度」
「……できるわけ、ないだろう」
考えて、考えて、考え疲れて。
亮は、そのまま、菊を前に、うとうとと、眠ってしまいました。
夢の中で、亮は目を覚ました。
そこにはすでに少女の背丈にまで、大きくなった菊が亮を見下ろしていました。
その冷たい指が、亮の首にかかる。
黒く濡れた瞳が、真上から亮を見つめる。
そこには、燃えるような、憎悪だけがあった。
「――ばあちゃんっ……!」
苦しさの中、亮は、両手で菊を突き飛ばしました。
畳の上に転がった、その顔を、亮は見てしまった。
――人形の目から、涙が、幾筋も、幾筋も、流れていた。
そこで、目が覚めた。
大量の汗。
荒い呼吸。
薄闇の中、床に菊が、うつ伏せに倒れていました。
亮は、しばらく、動けなかったそうです。
そして、ぽつりと、こう呟いた。
「……ばあちゃんは、あの中にいる」
「涙を流しながら、自分の意志とは関係なく、俺を殺そうとしている」
「俺がこのまま殺されたら――ばあちゃんは、悲しむ」
「……でも、俺は、ばあちゃんを、もう一度殺すようなことは、できない」
亮は、ゆっくりと立ち上がり。
机に向かって、ペンを、握りました。






















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