住み始めて10年も経たない頃。
ご主人の様子が、明らかにおかしくなった。
それまで酒を飲めなかった。
体が受け付けず飲まない人だった。
ところが、突然、酒を浴びるように飲み始めた。
そして、酒を飲むと人が変わった。
怒鳴る。
暴れる。
子供たちに正座を何時間も強要する。
勉強ができないことを理由に、体罰まで加える。
家族は、以前のご主人を知っているだけに、その変化が信じられなかった。
なぜなら――
家の外へ一歩出ると、元のご主人に戻るからだ。
優しくて、穏やかで、子煩悩。
酒も飲まない。
タバコも吸わない。
ギャンブルもしない。
仕事も真面目。
料理も上手。
私たちが知っているご主人は、まさに「絵に描いたような良い父親」だった。
なのに。
家の中へ入った瞬間だけ、別人になる。
母の妹は、当時こう言っていた。
「本当に、家を一歩出ると普通なの。
でも、家に入った瞬間……顔つきまで変わるの。
般若みたいな顔になる」
まるで、ジキルとハイドのように。
真面目で、優しくて、何の問題もなかった男性。
その人が、家の中にいるときだけ、まるで別人になってしまう。
家族は、次第にその家を恐れるようになった。
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