僕は現在一人暮らしなのでこれは難しいかと思ったが調べると世の中変わった人がいるようでアバターと会話したい人のコミュニティというものがあり、そこに夜な夜なアバターを参加させることでアバターの会話力を磨かせることができた。
また他者との会話を通じてアバターは主体的に考えて動くことができるようになってきた。
なので簡単な家事であれば僕が詳細にイメージしなくても掃除、洗濯、ゴミ出しなどと考えるだけでアバターが寝ている間によしなにしてくれるようになっていた。
アバタールを飲み始めて半年経ったがアバターはすでに普通の人と区別ができない程度に行動し会話するようになっていた。
さて次はアバターに何をできるようにさせようかと考えながら出勤しデスクに座ると隣席の同僚の山本が元気に爽やかに「おはよう!!」と挨拶してきた。
おかしい。
山本は部署内でも暗いことで有名ないわゆる陰キャだ。こんなにはつらつとした挨拶なんて今までしてこなかったしするイメージも全くない。
一体どういうことかと訝しみながら彼を観察しながら仕事をこなすことにする。
午前中山本は本当に人が変わったように生き生きと仕事をしていた。
同僚からの依頼にも嫌な顔ひとつせずテキパキとこなしていく。
昼飯時には僕や同僚を誘い「コンビニ飯ばかりなのもよくないですよ。たまには外に食べに行きましょうよ」と提案してきた。
本当にどうしたんだろう、頭でも打ったのかと本気で心配していたが14時ごろに突然いつもの山本に戻っていた。
同僚たちはその急な変化に戸惑っているが僕だけは察しがついていた。
アバタールだ。
きっと6時間の薬の効果が切れて今目覚めたのだろう。
というかアバターに出勤させて本人は寝ていたのか。究極のサボりだな。いや、仕事はしてるからサボりではないのか?わからん。
いろいろ思うところもあったが仕事はいつもより進捗がいいし、なにより同じアバタール利用者のよしみで彼のサボりについては上司には黙っておいてやることにした。
その日家に帰り早速気になったことを調べた。
山本とそのアバターの性格があまりに違うのはなぜなのだろう?
検索するとアバターの性格は本人の性格に関わらず明るくて社交的になることが多いということが報告されていた。
確かに僕のアバターもネットで女性と話す時は僕よりも圧倒的にうまくやれているのをよく夢で見ていた。
そこで僕は大きな賭けに出た。
最近入社した隣の課の佐藤春奈さん、前から気になっていた女性で仕事ではたまに絡みがあるがそれ以上の会話は今もできていない。
そこである日、残業で彼女と数名しか残っていないタイミングを見計らってトイレに行き、佐藤さんと親密になることを強くイメージしてアバタールを4分割にしたものを飲む。
トイレの個室でそのまま気を失う。
そのときの夢はまさに夢のようだった。
部屋に戻った僕は佐藤さんの横を通る時に軽く挨拶して、残業を労う言葉をかけた。
佐藤さんも「室井さんこそいつも残業お疲れ様です。」と暖かい言葉を返してくれた。僕がいつも仕事で残っていることを認識してくれていることが嬉しかった。
そこから僕は何気ない会話を続けていたがこれがどんどん盛り上がり気づくと週末に飲みに行く約束を取り付けていた。
あまりに自然に誘うので佐藤さんが「土曜日楽しみにしてますねー」と答えるまで僕がお誘いしていることにすら気づかなかった。
アバターを今まで地道に育成してきて本当に良かった。
























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