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特別投稿

礎吽亭雁鵜さんによる特別投稿にまつわる怖い話の投稿です

睡眠時活動性人格形成薬
長編 2026/08/15 14:41 215view

その日から完全に浮かれていた僕は土曜日になってやっと重大なことに気づく。
アバターと違って僕は女性と流暢に話せない、佐藤さんにつまらないやつと思われてしまう。
そもそも佐藤さんが望んだのはアバターとのデートであって僕とのデートではないのではないか?
そう思うと答えは一つだった。
待ち合わせの19時の1時間前に僕は佐藤さんとより親密になることをイメージしてアバタールを1錠飲んだ。

夢の中で僕は佐藤さんとのデートを大いに楽しんだ。
待ち合わせ場所に来た佐藤さんはいつものビジネスカジュアルではなくフワフワした女子って感じの可愛い服装だったのにまず興奮した。
一軒目の気さくな居酒屋では佐藤さんが意外に居酒屋大好き人間で「女子会だとどうしてもイタリアンとかになっちゃうんですが本当はこういう店でビールとホッケが一番なんですよー」と飾らずに笑っていたのが印象的だった。
その後は小洒落たバーに寄って各国のクラフトビールを飲み比べしたのもお気に召したようだった。

バーを出て夜風が気持ちいいねなどと話しながら駅に向かって歩く。

僕は彼女に終電ある?と聞くと彼女はこちらを振り返る。
目が、覚めた。
もう12時!?と完全にテンパる自分。シンデレラの気持ちが痛烈に理解できた。
焦りながらも佐藤さんの方を見ると何かボソボソ言っている。
いつもハキハキとしてる佐藤さんらしくないと思いつつよく聞くと「すみません、今日はこれで帰らせてもらいます。すごく楽しかったです。また月曜に会社で。」とすごく小さくたどたどしく必死に声を振り絞っているようだった。
まるでいつもとは人が変わってしまったような様子に驚いているといそいそと彼女は1人駅に歩いていってしまった。

翌日の日曜の朝起きて昨日の出来事を振り返る。
薬が切れてしまった後は少し変な空気になってしまったが概ねデートは成功したのではないだろうか?
全てはアバター様のおかげであることは間違いない。
そこでふといつも甲斐甲斐しく働いてくれているアバターに何かお礼ができないかと思った。

アバターはいつも僕がイメージした彼にやってほしいことをしてくれるが、お礼にアバター自身が望むことを自由にさせてやることはできないだろうか?

今は11時だから1錠飲めば晩御飯前には目が覚めるなと逆算し、アバターが自身の意思で自由に望むことをすることを念入りにイメージしてアバタールを飲み込んだ。

いつものように夢の中で僕はむくりと起き上がる。
さて僕は何をするのだろうか?と様子を見ているといつも通り部屋の掃除をして洗濯をしている。
イメージを間違えたか?と訝しんでいると僕はスマホを手に取り薬の切れる30分ほど前にアラームが鳴るようにタイマーをセットした。
すると僕は財布を掴んで外に出た。
15分ほど歩き駅前のいつもアバタールを買っている薬局に辿り着く。
いつも僕がしているように薬剤師さんにアバタールを注文する。そして僕よりも気さくに楽しげに薬剤師さんと話す僕。
そういえばさっき飲んだのが今月分のアバタールの最後の1錠だった、僕のために買い物までしてくれるのか。
アバターの忠誠心の高さにすっかり感心してしまう。
僕はその後、日用品の買い出しを一通りしてから帰宅する。
家に帰りながら今後もたまに彼の自由になる時間を作ってやろうと決めた。

4/5
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