しかしさらに10回ほど折り返した時点で違和感は確信に変わった。
明らかにおかしい。
こんな深い駅なんて聞いたことがない。
だが降り続ける以外の選択肢はなくひたすらに不安を押し殺してただ降りていく。
少しずつ電灯の光量が弱くなってきていることにも気づいた。
踊り場の上から見下ろすと下の踊り場がよく見えなくなっている。
それでも足は止まらなかった、止められなかった。
次折り返せばきっと明るいホームが現れるに違いない、そう信じて降り続けた。
そんな淡い期待も虚しくいくら降りてもただ暗くなるだけでそれ以外の変化はなかった。
とうとう踊り場から見下ろした階下はほぼ暗い穴のようにしか見えなくなってしまった。
これ以上は降りたくないと頭に警鐘が鳴った。
しかしこれまで降りた距離を思い返すと登って戻るのは絶望的なように思えた。
どうしようと逡巡したがふと過去に受けた研修の内容が頭をよぎった。
コンコルド効果・・・人は投資の継続が損失の拡大に繋がるとわかったとしてもすでに支払ってしまったコストを惜しんで損切りができず却って損害を大きくしてしまう人間心理
研修中は客観視もできない愚かな人間がいるものだと胸中で嘲笑っていたが・・・ああ完全に損切りするタイミングを間違えたな、となんだか笑ってしまった。
よし、登ろう。
そう決断し今まで一心不乱に降りてきた階段を逆に登り始めた。
一体どれくらいかかるだろうか、途中で力尽きないだろうか、こんなことならジムにでも通ってればよかったな、などと考えながら登ったよ。
しかし驚いたことに数回折り返すと先ほど居眠りをしてしまった改札階のベンチが目に飛び込んできた。
混乱のあまり呆然と立ち尽くしていると急ぎ足のサラリーマン風の男性とぶつかって舌打ちをされてしまったがそんなことが涙が出るほど嬉しかった。
しかしもう足がへとへとで立っているのも限界だったのでもう一度ベンチに腰を下ろすことにした。
今自分が体験したことはなんだったのだろう?いわゆる怪奇現象というやつなのだろうか?
疲れのせいか考えはまったくまとまらなかった。
目が覚めた。
また寝てしまっていた!?
無意識にスマホを見る・・・19時⁉︎
階段を降り始めたのが19時だったはずだ。時間経過がおかしい。
いやそうじゃないな。さっきまでのは単なる夢だったということだな。いやぁ酷い夢だったとニヤつきながら立ち上がりホームに続く階段を降り始めた。
























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