上司が突然入院したために業務引き継ぎを兼ねてお見舞いに伺った時に何があったのかを本人から聞いた。
その日は朝からハードスケジュールでな。都内の顧客を多数回って最後の顧客のところを出たときはすでに17時を超えていたんだ。
この日は1日パソコンを開けなかったので処理すべき案件が山積みだった。
さて帰社して腰を据えてやるか、近くの喫茶店で急ぎのものだけでも処理してしまおうか、どうするか悩んだんだが一度帰社することにしたんだ。
10分ほど歩いて最寄りの地下鉄駅に着いて地上から地下鉄駅への下り階段を降りた。
その駅はB1階に改札がありホームはさらに下にある構造だった。
改札を通ってホームに降りていこうとしたんだが急にどっと疲れを感じてな。ちょうど目の前にベンチがあったので少し休むかと腰を下ろしたんだよ。
重たい鞄を肩から降ろして少し目を閉じて深呼吸を一つ二つ。
ああ身体が重いなぁとか呟きながらも意識は帰社してからやるべきことの優先順位付けをしていた、はずなんだよ。
ハッと目が覚めて自分が完全に寝落ちしてしまっていたことに驚いた。
スマホで時間を見ると2時間ほどが経っていた。
帰宅はだいぶ遅くなりそうだなとひとりごちてホームに続く下り階段をやや急ぎ足で降りていったんだ。
そこの階段は折り返し階段になっていて20段ほど降りたら踊り場で、そこで180度くんっと回ってまた階段を降りていく、そんなありふれた構造だった。
疲れてるみたいだから急ぎの案件だけでも処理してさっさと帰ってしまおうなどと考えていたんだ。
脳のリソースのほとんどをこれからの事務処理のことに割いてひたすら階段を降りた。
ふと違和感をおぼえた。
あれ?どれだけ降りるんだ?
意識していなかったからわからないがそれでもそこそこ長い間降り続けているのはわかる。
まあすごく深い駅もあるよなと思いながらさらに降りていった。
おかしい。もう確実に10回は折り返している。
ということはすでにB5あるいはB6程度の深さに到達しているのではないか?
そんなに深い駅があるのか?
さらに降りていく中でまた一つおかしな点に気づいたんだ。
階段を降り始めてから誰ともすれ違っていないんだよ。まだ19時なのにも関わらずだ。
でもこれについてはすぐにもっともらしい理屈に辿り着いた。
こんなに長い階段を登るのは骨なのでこの駅を使い慣れてる人はエレベーターなりエスカレーターなりを使うのだろうと。
そう自分を納得させたものの降りる足は少し焦っているかのように早まっていた。























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