私は最寄り駅で降りた。
家まで歩いた。
マンションが見えてきたところで足が止まった。
帰りたくなかった。
でも、帰らないわけにもいかない。
警察を呼ぶことも考えた。
ただ、何と説明すればいいのか分からなかった。
「自分と同じ顔の女が、鍵を開けずに家の中にいる」
そんな話を誰が信じるだろう。
マンションに入った。
エレベーター。
4階。
廊下。
自分の部屋の前。
鍵は閉まっていた。
スマホで防犯カメラを見る。
玄関には誰もいない。
私はドアを開けた。
「……ただいま」
なぜか、そう言ってしまった。
返事はない。
靴を脱ぐ。
廊下に米の段ボールが置いてある。
その向こう。
リビングのドアが少し開いていた。
朝、閉めたはずだった。
私はしばらく動けなかった。
でも、防犯カメラには何も映っていない。
意を決してドアを開けた。
誰もいなかった。
窓も閉まっている。
ベッドの下。
クローゼット。
浴室。
トイレ。
全部確認した。
誰もいない。
最後にキッチンへ行った。
テーブルの上に、1枚の写真が置いてあった。
大学時代の旅行写真。
配達員が言っていた写真だった。
リビングの棚から持ってこられている。
私は震える手で写真を取った。
何度も見た写真だ。
大学3年の夏。
女友達4人で海へ行ったときのもの。
私も笑って写っている。
でも。
5人いた。
1番右。
私の隣に、
もう1人、私が立っていた。
同じ顔。
同じ髪。
同じ服。
そいつだけ笑っていなかった。
私は写真を捨てた。
その日のうちに友人の家へ逃げた。
管理会社には退去すると伝えた。
荷物は業者に頼んで運んでもらった。
あの部屋には2度と1人で入らなかった。






















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