私はその日の仕事を早退した。
帰りの電車の中で、配送会社に電話した。
伝票番号を母に聞いて、配達状況を確認してもらった。
やはり配達済みだった。
「置き配ですか?」
私が聞くと、
担当者が答えた。
「いえ、対面でのお渡しになっています」
まただ。
「配達した人と話せますか」
しばらく待たされた。
そして男性が電話に出た。
声を聞いた瞬間、分かった。
前と同じ配達員だった。
向こうも覚えていたらしい。
「あ……」
それだけ言って黙った。
「今日も女の人が出ましたか」
私は聞いた。
しばらく返事がなかった。
「出ました」
「どんな人でした?」
「……前と同じ人です」
電車の音が急に遠くなった。
「覚えてるんですか?」
「はい」
「どうして?」
また沈黙。
「今日、変なこと言われたんです」
「何て?」
男性が息を吸った。
「『今日は写真、撮らないんですか』って」
私は何も言えなかった。
「前に写真を撮ったの、覚えてたみたいで」
最初の洗剤。
置き配の写真。
銀色のメーターボックス。
配達員の後ろに立っていた女。
「それで……」
男性の声が少し震えていた。
「すみません。こんなこと言ったら変なんですけど」
「はい」
「前回は気づかなかったんです」
「何に?」
「似てるなって」
喉が鳴った。
「誰にですか」
「電話してる方にです」
「私の顔、知らないですよね」
「今日見ました」
「え?」
「玄関に、写真が飾ってありましたよね」
そんなものは飾っていない。
「旅行の写真みたいな。何人かで写ってるやつ」
私は大学時代の友人たちとの写真を1枚だけ持っている。
でも、それはリビングの棚に置いてある。
玄関からは絶対に見えない。
配達員が続けた。
「その写真に写ってる人と、荷物受け取った人、同じ人ですよね?」
声が出なかった。
「……すみません」
男性が言った。
「次から、できれば僕を担当から外してもらいます」
電話が切れた。


























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