それから1か月後。
別の街に引っ越した。
通販も使わない。
置き配もしない。
実家から何か送るときも、必ずコンビニ受け取りにしてもらっている。
防犯カメラも付けた。
今のところ、何も起きていない。
だから、もう大丈夫だと思っていた。
昨日までは。
昨日の夜、友人からメッセージが来た。
「誕生日プレゼント送ったよ」
私の誕生日が近いことを思い出して、サプライズで送ってくれたらしい。
住所は引っ越したときに教えていた。
私はすぐ電話した。
宅配便はやめてほしいと伝えようとした。
でも、もう届いていると言う。
「届いてないよ」
そう答えると、友人が少し黙った。
「え? でも配達済みになってるよ」
「置き配?」
「いや……手渡しって書いてある」
嫌な汗が出た。
「何時?」
「今日の午後2時18分」
私はその時間、ずっと家にいた。
リビングで仕事をしていた。
インターホンは鳴っていない。
玄関にも行っていない。
「伝票番号送って」
友人から番号を送ってもらい、すぐ配送会社に電話した。
事情を説明すると、担当の配達員に確認してくれることになった。
10分ほどして折り返しが来た。
知らない男性の声だった。
「本日のお荷物ですが、確かにご本人様へお渡ししております」
「私、受け取ってません」
「ですが……女性の方が出てこられて」
心臓が強く鳴った。
「どこからですか?」
「どこから、というのは?」
「玄関から出てきたんですか?」
男性が黙った。
「……はい」
「ドアを開けて?」
「はい」
私は玄関を見た。
リビングから、廊下の先にドアが見える。
ずっと鍵はかかっている。
チェーンもしてある。
「その人、どんな服でした?」
電話の向こうで、配達員が少し考えた。
「白いTシャツに……紺色っぽいズボンだったと思います」
息が止まった。
あのときなくなった服。
「顔は?」
「お客様じゃないんですか?」
「違います」
配達員が黙った。
しばらくして、
「あの……」
と小さな声で言った。
「何ですか」
「ちょっと変だなとは思ったんです」
「何が?」
「荷物を渡したあと、その人に言われたんです」
嫌な予感がした。
「何て?」
男性は迷ってから答えた。
「『今度はちゃんと、中まで持ってきてくださいね』って」
私は何も言えなかった。
「意味が分からなくて。冗談だと思ったんですけど」
その瞬間。
玄関の防犯カメラから通知が来た。
「人物を検知しました」
私はリビングにいる。
玄関までは廊下を挟んで10メートルほどある。
スマホでカメラを開いた。
玄関には、
誰もいなかった。
ただ、
さっきまで掛かっていたはずのチェーンが、
外れていた。
電話の向こうで配達員が何か言っている。
でも、もう聞こえなかった。
玄関のドアノブが、
ゆっくり下がった。

























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